陸自元隊員五ノ井さん性被害訴訟 横浜地裁で初弁論 国側、加害事実認める 元隊員4人は争う姿勢

第1回口頭弁論を終え、記者会見で思いを語った五ノ井さん=横浜市中区

 陸上自衛隊での性被害を訴えた元自衛官の五ノ井里奈さん(23)が、国と元隊員5人=いずれも懲戒免職=を相手に、計750万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、横浜地裁(岡田伸太裁判長)であった。国側は元隊員らの加害の事実を認めた上で、請求への回答を留保。元隊員のうち4人は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。

 訴えによると、五ノ井さんは福島県の郡山駐屯地の部隊に所属していた2020~21年、元隊員から胸を触られたり、自衛隊の格闘の技の「首ひねり」で押し倒されたりするなどし、日常的な性的暴行やセクハラの被害で精神的苦痛を受けたとしている。

 国はそうした実態を把握しようとせず、五ノ井さんが被害を申し出た当時も適切な調査を怠り、再発防止策を取らなかったなどと訴えている。

 国側は答弁書で、「極めて深刻な事案」として、元隊員らの行為のほか、被害の訴えを受けた当時の上官が事実関係の調査を十分にしなかったことも認めた。その上で、国の責任に関する五ノ井さん側の主張がより明確にされる必要があるなどとし、答弁を留保した。

 原告側代理人などによると、元隊員ら4人は、性的暴行やその関与について否認。1人は事実を認めているという。

 元隊員5人は、防衛省の調査の結果、性暴力やセクハラが確認されたとして懲戒免職処分となった。

 5人のうち強制わいせつ容疑で書類送検された3人について、同県の郡山検察審査会が昨年9月、不起訴不当と議決。再捜査した福島地検が今年3月、強制わいせつ罪で3人を在宅起訴し、29日に福島地裁で初公判が開かれる。

© 株式会社神奈川新聞社