鶴岡・由良地区の灯台に光 地域資源継承へ、住民ら草刈りに汗

草が取り除かれていく前灯=鶴岡市由良

 つるや雑草に覆われた古い灯台が、往時の姿を取り戻した。鶴岡市の由良漁港への漁船の安全入港を支えてきた導灯で10日、地元住民が枝切りや草刈りに汗を流した。「由良漁業の歴史を文化財として次世代に受け継ぎたい」と、今後はペンキの塗り替えやイベントの開催を計画している。

 由良漁業者会と由良地域協議会「ゆらまちっく戦略会議」が主催し、由良自治会が共催した。導灯は1961(昭和36)年に完成し、高さ6.8メートルの前灯と、高さ10メートルの後灯がセットになって船を導いてきた。新たな防波堤と灯台の整備に伴って廃止されることになったが、地元住民の強い要望により前灯は残され、後灯のみが2002年に撤去されたという。

 ただ、保存された前灯は当時の住民の高齢化などで次第に管理が難しくなった。近年ではつるに覆われ、葉が枯れる冬場以外はほとんど姿が見えなくなっていた。こうした状況から由良漁業者会の佐藤欽也会長(63)と、ゆらまちっく戦略会議の斎藤勝三会長(58)が中心となって現在の灯台所有者の市や、周辺の地権者などと調整を重ねてきた。

 10日は漁業者や住民有志の16人が枝切りばさみや草刈り機を携えて前灯へ。つるを切り落とし、コンクリートの土台を覆っていた土を取り除くなどした。佐藤会長は作業の手を休め「導灯の光はきれいな緑色で無事帰ってきたと安心感を感じられた」と懐かしみながら「安全航海を支えてくれた恩返しの気持ちを込めて今後も守っていきたい」と話した。

 今後は白いペンキで塗り直すほか、花の植栽、臨時のカフェテラスを設置するイベント、灯台のライトアップなどを検討している。斎藤会長は「地域資源として今後も由良地区を照らし続けてほしい」と丘の上の灯台を見詰めていた。

草に覆われた前灯=鶴岡市由良

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