オランダのNGO、6月19日開催のカンヌライオンズでグリーンウォッシュを監視 新開発のツールも配布

Image credit: Creatives for Climate

世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」が6月19日に開幕する。広告業界では近年、広告の内容のみならず、制作過程における環境負荷の低減などサステナビリティの実践がより一層求められるようになっている。クリエイティブ業界の気候変動への取り組みを促進するオランダのNGO「Creatives for Climate(クリエイティブズ・フォー・クライメート)」は、グリーンウォッシュ問題に根本から取り組む“チェンジエージェント(変革の促進者)”の連携を強化・拡大することを目指し、昨年に続いて仏カンヌで新たなツールを発表する。(翻訳・編集=小松はるか)

2019年に設立されたCreatives for Climateは、世界中で消費者とのコミュニケーションに携わるさまざまな人たちに向け、気候変動対策に取り組むためのスキルやツールを提供する団体だ。広告業界では、サステナビリティに関するコミュニケーションを行う上で必要となる知識やスキルが不足し、能力ギャップの拡大が課題となっており、そうした状況に対処する狙いがある。Creatives for Climateのメンバーらは、グリーンウォッシュを監視するために新たに開発したツール「グリーンウォッシュ・スウォッチ(グリーンウォッシュ見本)」を携えてカンヌライオンズを隅々まで歩き回り、「広告業界の気候変動対策」という話題が参加者らの会話の中心になるよう目指す。

Image credit: Creatives for Climate

グリーンウォッシュ・スウォッチは、英国の金融系シンクタンク「プラネット・トラッカー」が制作した枠組みをもとにつくられている。昨今はグリーンクラウディング、グリーンリンシング、グリーンシフティングなどの新たなグリーンウォッシュが生まれている通り、ますます複雑になるグリーンウォッシュを識別するためのツールだ。手のひらサイズで色見本帳のような形をしており、グリーンウォッシュの種類を簡単に判別できるようになっている。企業・ブランドの責任について会話が広がるように、シンプルで興味を引くデザインになっているのが特徴だ。

Creatives for Climateの創始者兼会長のルーシー・フォン・スターマー氏は、「私たちがいくら環境・社会に良い影響をもたらすためにクリエイティビティを活用していくことを目指していても、業界として、悪影響をもたらすクリエイティビティに対して立ち向かわないのであれば何の意味もありません。グリーンウォッシュに対して立ち上がるということは、取り組みの遅れや徐々に違法になってきている企業・ブランドの行動に対して立ち上がるということです。残念ながら、グリーンウォッシュを行う代理店や企業・ブランドは増えており、カンヌライオンズでは道義に反した行為を多く目にすることになると考えています」と注意を喚起する。

Creatives for Climateは開催期間中、気候変動対策に取り組み、化石燃料関連の企業と仕事をしないことを誓約する580社の広告代理店により結成された「Clean Creatives(クリーン・クリエイティブズ)」と連携し、イベント「チェンジ・エージェント・ハッピー・アワー」(6月20日火曜日19:00〜20:30)を開催する。ここでもグリーンウォッシュ・スウォッチを配布する予定だ。

このほか、オランダのクリエイティブ産業の世界展開を支援する「Embassy of Dutch Creativity(エンバシー・オブ・ダッチ・クリエイティビティ)」が会場で開催するイベントのなかで、「気候危機に取り組むことは、人材危機に取り組むこと」と題したトークセッションを主催する。セッションでは、企業や代理店のリーダー、草の根活動家、起業家など業界のいろいろなアクターに光を当て、「気候危機の解決は人材危機の解決になりうるか」「気候危機の解決のためにスキルアップやリスキリングすることは、より良い代理店や企業・ブランドづくりにつながるのか」といったテーマを深掘りしていく。

Creatives for Climateはカンヌライオンズの開催期間中、オンラインで「グリーンウォッシュ・スウォッチ」を利用した参加者に対し、有料のトレーニングツール「グリーンウォッシュ・ウォッチ・トレーニング」を無償提供する予定だ。

(編集部注:記事内の日時は全て現地時間)

© 株式会社博展