今さら聞けない「内閣不信任案ってなに」?3分後に人前で話せる政治用語解説

最近「内閣不信任案」という言葉が毎日のように聞かれるようになりました。なんとなく意味は分かるけどどういうものだっけ?と思っているそこのあなた。このコラムを読めば、3分後には職場で、家で、飲み屋で、「内閣不信任案」の解説ができるようになります。

内閣不信任案、あなたはどこまで知っていますか?

まず、「内閣不信任案」は「内閣不信任決議案」の略です。読んで字のごとく、国の仕事を進める「行政権」のトップである内閣に対して「信用して国の統治や政治を任せられませんよ」という国会全体の意思表示を意味する「決議」を求めるものです。

国会での議決が必要となる「予算案」や「法律案」と同じ「議案」の一つです。可決するためには、出席議員の過半数が賛成する必要があります。

この内閣不信任は日本国憲法に基づく権限です。内閣は国の元々、内閣は国会が指名して天皇が承認する「内閣総理大臣」によって組まれたチームです。難しい言葉を使えば、内閣が議会の信任によって存在している「議院内閣制」が採用されているため、衆議院を解散してもしなくても、内閣は総辞職しなくてはなりません。

決議案が出席議員の過半数の賛成で可決されると、内閣は10日以内に衆議院解散もしくは内閣総辞職のどちらかを選ばなければなりません。いわゆる「法的拘束力」を持つ、とても強い権限になっています。

ちなみに、参議院から信任できない意思を示す「問責決議案(もんせきけつぎあん)」を提出することはできますが、こちらは内閣に対して、ではなく総理や大臣などの個人が対象です。加えて、可決されても解散・総辞職する必要はありません。政治的に内閣へのプレッシャーを与える効果に限定されるようです。

明日、内閣不信任案が提出されたら?

内閣不信任案が可決された場合

内閣不信任案が可決された場合、「10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と憲法第69条に明記されています。

つまり、総辞職までには2つの流れがあります。

①衆議院解散ルート(この場合、解散から40日以内に選挙を実施する)

②即時の内閣総辞職ルート(この場合、選挙はない)

不信任否決でも、解散総選挙ができるワケ

ちなみに、内閣不信任案が否決されることは多々あります。なぜなら、内閣総理大臣は国会で最も議員数が多い与党から選出され、構成員となっている与党勢力が過半数を占めていることが多いためです。

今の衆議院の勢力図を見ても、与党勢力が過半数を占めているため、仮に野党勢力が全て内閣不信任案に賛成しても否決される公算が大きいのです。こうした状況でも、岸田総理が「内閣不信任案を出されれば即日解散」と言い切れる理由には、もう1つの「解散権」の存在があります。

それは、内閣の助言と承認を基に、天皇の国事行為として解散する、憲法7条に基づく規定です。現在の憲法下では、こちらのケースが圧倒的に多いのです。ただし、天皇の国事行為

のため、

今回の政治日程の図の中に「天皇陛下の海外訪問」(6月17日~6月23日)が組み込まれているのはそのためです。この訪問期間中は、国事行為は「臨時代行」の態勢となり、過去の解散総選挙が臨時代行期間中に行われた事例はありません。

また一方で、今国会が6月21日に閉会するため、閉会後に解散するには臨時国会を召集するなどの手続きを要します。

もしも7条解散を行う場合、最短でスムーズに進めるためには、17日までに衆議院を解散することが想定されうるケースということです。

今月に勢いを増す「解散風」の中では政争の面がクローズアップされることが多く、ネット上には「国民が置き去りになっている」などの声も上がっています。

だからこそ、ここ数日の動きは見逃せません。なぜなら、政争を繰り広げている国会議員を選んだのは私たち、そして次の選挙で選ぶのも、誰でもない私たちだからです。

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