大分市の高島でウミネコの標識調査 バンダーの中村さんら、長年地道に活動【大分県】

ウミネコが向かってくることも。ゴーグルなどで防備しながら調査に当たる=大分市佐賀関(中村茂さん提供)
高島のウミネコの標識調査に当たる中村茂さん
岩の間に潜むウミネコのひな(中村さん提供)
高島上空を飛び交うウミネコ(中村さん提供)

 【大分】ウミネコ(県指定天然記念物)の集団繁殖地、大分市佐賀関沖の高島で10日、「バンダー」と呼ばれる鳥類標識調査員の中村茂さん(48)=獣医師・長崎市在住=らが個体を識別するための標識調査をした。巣やひなの成育の状況、移動の実態などを知るすべとして、繁殖期に合わせて長年、地道に活動を続けている。

 ウミネコはカモメ科の鳥で、集団で繁殖する習性がある。高島は全国に二十数カ所しかない集団繁殖地の一つ。冬場から今の時季にかけては数千羽が飛び交う。例年、4月下旬ごろから巣作りをして産卵。5月下旬ごろからひながかえるという。

 10日は協力者の4人と島に渡った。調査場所の岩礁地帯でひな23羽、成鳥1羽に個体識別番号入りの足環(あしわ)を付け、巣の数などをカウントした。

 中村さんによると「以前は多い時で60羽ほど、平均して40羽ほどに足環を付けていた。ここ数年はかなり探し回ってこの数」。繁殖場所を移したのか、総数が少なくなっているのか、今の段階では分からないが、「周辺のウミネコが減っている印象はない」という。巣の数は165個で昨年より多かった。

 標識調査は鳥類の保全推進を目的に環境省から委託され、山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)が実施。野鳥の詳しい知識、安全に捕獲、放鳥する技術を持ち、特別な許可を受けた全国各地のバンダーがボランティアで活動する。

 中村さんは北海道の大学院生だった2000年、バンダーの認定を受け、道内で鳥類の調査に当たった。高島のウミネコの調査は、高齢になった前任者に後を託され、大分県職員だった05年から携わる。

 「高島は九州では最大級の繁殖地。それほど自然が豊かで、餌場としての条件がいいということ」と中村さん。「繁殖の動向を見守りつつ、事例発表などを通じて佐賀関の自然の魅力を広く知らせられるように活動していきたい」と話した。

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