やはり王者は強し。深紅のMANを駆るノルベルト・キスが4戦4勝の完全制覇/ETRC第2戦

 2023年のETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第2戦が、6月10~11日のスロバキアリンクで開催され、王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)が土日の両予選でスーパーポールを制覇すると、勢いそのまま各日2ヒートの決勝でも勝利を挙げる、週末“クリーンスイープ”を達成。昨季ハンガロリンクに続くパーフェクトで、今季の快進撃も予感させる印象的な活躍を演じてみせた。

 本来なら、そのハンガリーで6月3~4日の週末に予定されていた第2戦は、シーズン開幕直前にサーキット側より「最優先事項であるハンガロリンクの再建工事のため」との通達を受け急遽のキャンセルが決定。代わって連戦予定となっていたこの週末のスロバキアが“実質的”第2戦となった。

 その土曜予選から勢いを見せたのがディフェンディングチャンピオンのキスで、2014-2015年に続き2021-2022年の連覇による、自身4度目の戴冠を決めたばかりの男は、シリーズ6冠の“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)やアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/MAN)、サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/MAN)らおなじみの仇敵を退けて、スーパーポール最速を奪ってみせる。

 しかし午後の13時半開始予定だったレース1を前に、トラック上を集中豪雨が襲い、レースコントロールは「水量が多すぎる」との判断でディレイを選択。都合45分遅れで、フォーメーションからセーフティトラック先導で1周を周る変則スタートでの勝負となる。

 これでリズムが崩れる心配もあったキスだが、円熟期を迎えた王者は先導周回で後続を牽制する見事なペースコントロールでグリーンシグナルを迎えると、典型的なスタイルのまま後続から姿を消し、攻撃を受ける恐れもなく20秒以上の差を付けてフィニッシュ。背後ではハーン、アルバセテ、レンツの3台が激しい攻防戦を繰り広げ、トラックをグラスエリアに落としたハーンが4番手に後退するまさかのミスで勝負アリ。

 その三つ巴バトルの後ろでは、開幕戦を欠場しこれが今季初戦となったジェイミー・アンダーソン(アンダーソン・レーシング/MAN)に対し、ターン6のアウト側から豪快なオーバーテイクを見せたシュティフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)が、5位を奪い獲る結果となった。

豪雨でディレイとなったレース1でも、ポールシッターの王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)はリズムを失わず
続くレース2でもシリーズ6冠の“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)を退け、初日完封を収めた

■リバースグリッドのレース4でもキスが圧倒。週末完全制覇を達成

 このディレイの影響で現地17時20分にスタートしたレース2も、引き続きミックス・コンディションの路面状況で、リバースグリッドから実力者たちが猛然とポジションを挽回。早い段階で首位に躍り出たハーンに対し、キスが挑むいつもの構図になると、あらゆるノウハウを駆使して“帝王”を追い詰めた深紅のMANが、残り3周でインを鮮やかに差してゲームセット。直後に降雨が強まり、チェッカーまでFCY(フルコースイエロー)が発動した展開にも助けられ、王者キスがまずは初日土曜を制圧した。

 明けた日曜のスロバキアリンクは前日の天候が嘘のような快晴が広がり、完全ドライ勝負で勢力図にも影響が出るかと思われたが、予選とスーパーポールの両方で、王者キスがライバルを黙らせる最速タイムを計時していく。

 降雨の予報もあるなか、レース3はドライでスタートを迎えると、オープニングラップでプロモーターズ・カップ登録のホセ-エドゥアルド・ロドリゲス(ロボコノーテ・レーシング・トラックチーム/MAN)がグラベルに転落、すぐに赤旗が提示される。

 このアクシデントでハルムもグラベルにスタックし、救助車両の支援なしには脱出が困難となったことから、リスタート後以降もターン1はイエロー区間のままレースが続行される。

 この条件でさらに「イージー」となったポールシッターのキスは、背後のレンツに脅かされることもなく、ドラマのないレースを完了。週末3勝目、今季5勝目を挙げ、予選直前にターボの交換を強いられていたアルバセテが、作業の甲斐あっての3位表彰台を獲得した。

 そして週末最終、完全制覇のかかるキスが8番手から挑んだリバースグリッドのレース4は、教科書どおりのドライビングで、礼儀正しくクリーンなレースを展開したキスが、すぐさま首位ハーンの背後に接近。そのままイベコを仕留めて週末完全制覇の偉業を成し遂げた。

 出遅れた開幕戦を経て早くも選手権スタンディングの定位置に返り咲いたキスに、ハーンが喰い下がる構図となった2023年のETCRシーズン。続く第3戦はシリーズ初開催、ポーランド西部の古都ポズナンにある1978年建設のレーストラック、トルン・ポズナンにて6月24~25日に争われる。

日曜も予選とスーパーポールの両方で、王者キスがライバルを黙らせる最速タイムを計時していく
分厚いトップ4の壁を突き崩したいシュティフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)だが、レース3ではスタックの憂き目に

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