“気持ちの整理がつかない”可夢偉と平川。スーパーフォーミュラSUGO戦に向け山下健太の一言が“刺激”に?

 全日本スーパーフォーミュラ選手権の第5戦を前にした6月16日、TOYOTA GAZOO Racingでル・マン24時間レースを戦った小林可夢偉と平川亮が、スポーツランドSUGOで行われた記者会見に出席した。

 この会見は、例年ル・マン24時間レースの翌週にスーパーフォーミュラのSUGO大会が行われることから、日本モータースポーツ記者会(JMS)、日本レース写真家協会(JRPA)、TOYOTA GAZOO Racing の共同主催のもと、走行前日に開催しているもの。

 昨年は平川のル・マン初優勝後でお祝いムードとなったこの会見。今年はテストデー直前に“ルールにない”BoP(性能調整)の変更があり、レースウイークを通じて苦戦。決勝でも7号車GR010ハイブリッドが夜中にリタイア、8号車も終盤までトップ争いを繰り広げたがフェラーリ499Pに及ばず、総合2位でレースを終える結果となった。

 それでもふたりは笑顔で登場し、集まった報道陣や関係者らも拍手で迎えた。冒頭では優勝目指して戦い抜いた両選手の労を労い、JMSの高橋二朗会長と、JRPAの小林稔会長から花束が贈呈された。

 記者会見では、ル・マン24時間から約1週間経った現在の心境が語られた。

 チーム代表も兼務する可夢偉は「すごく濃縮した10日間だったなと感じています。非常に厳しいレースだったんですけど、本当にチームがひとつになって、厳しいル・マン24時間を戦うという上では、結果以上にチームで得られたものというのは、たくさんあったのかなと思います。チームがこの逆境を乗り越えて戦うために何が必要かというのを改めて感じられましたし、精一杯やったル・マン24時間だったなと思っています」とコメントした。

 一方、8号車のアンカーを任され、優勝を目指すも悔しいコースオフを喫した平川は「自分としては、最後にスピンしてクラッシュしてしまったのは、悔しい部分が大きかったです。勝ちに行くドライバーということで最後に選んでいただきましたけど、そこで勝つチャンスを削ってしまったということは、自分自身でも悔しかったです。2位という結果を持って帰ってくることができたので、これは胸を張って、シーズン残り3戦あるので、しっかりと良い走りをチームに貢献できるように頑張ろうと思います」と語った。

 やはり、優勝を逃した悔しさは、ふたりのなかでかなり大きく残っている模様。可夢偉も「やり切ったのは間違いないですし、悔しさもあります。正直なところ、両方の気持ちがあって、まだ整理がついていないです」と胸の内を明かしたのだが、“良かったな”と思ったことがひとつあるという。

「今回、フェラーリが勝って、普通(グランドスタンドは)フェラーリのフラッグでいっぱいになると想像するじゃないですか。でも実際には、ほとんどがGRの旗でした。これは純粋に嬉しかったなと思いました」

「ファンの人は純粋にレースとは何なのか。僕たちがやっていたモータスポーツというものをしっかり応援してくれましたし、このル・マンでGRのファンがすごく増えたんじゃないかなと、あれを見て感じました。それは非常に嬉しかったですし、結果では得られないものを得られた気がしたので、そこに関してはすごく良かったなと思います」

2023年ル・マン24時間で2位フィニッシュしたトヨタGAZOO Racingの(左から)小林可夢偉チーム代表、平川亮、ブレンドン・ハートレー、セバスチャン・ブエミ

 さまざまな想いがあるなか、今週末はスーパーフォーミュラ第5戦を迎えるのだが「けっこう気持ちを切り替えるのは大変でしたね」と平川。日本に着くまでの数日間は、なかなか気持ちの整理がつかなかったようだ。

「(この1週間で)気持ちが切り替わったと思ったら、また逆の方に切り替わったりするということをずっとやってきました。今は普通に(SFの方に気持ちが)戻っています」

「でも、逆にこうして1週間後にレースがあって、国も変わって日本に戻ってきたことで、気持ちを切り替えることができました。前週のことは一旦置いておいて、今週は日本でもしっかりと結果を残したいですし、明日の予選はしっかり集中して走りたいなと思います」

 一方の可夢偉は、あるドライバーの一言で気持ちが切り替わった様子だ。

「表参道でTGRがパブリックビューイングをしていて、そこに(国本)雄資とヤマケン(山下健太)が参加していたんですけど、最後の締めの一言みたいなところで、ヤマケンが『可夢偉さんと平川さんは落ち込んでいると思うので、SFはチャンスだと思うので頑張ります!」と言っていたらしくて。それを聞いたので、僕の中では『何を言っているんだ!』と、今燃えています」と、週末に向けて気合いが入っている表情だった。

 会見が終わると、それぞれのチームに戻り、明日からの走行に向けて準備を進めていたふたり。ル・マンで感じた悔しさを、今回のレースでどう力に変えていくのか。注目の2日間となりそうだ。

レース序盤など、リードを取る場面もあった8号車GR010ハイブリッド

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