解散見送りの岸田首相、底流に2本の電話 重要法案巡り「聞く力」

国会(資料写真)

 岸田文雄首相が今国会での衆院解散見送りを表明したことから「与野党対決の最大のヤマ場」とされた16日は粛々と国会日程が進み、重要法が相次いで可決、成立した。立憲民主党から同日午前に提出された内閣不信任決議案は午後の衆院本会議で否決された。解散見送りについては「与党大敗を避けた」などの臆測が飛び交う一方で、自民議員からの「2本の電話」への“聞く力”が働いたとの見方も出ている。

 官邸筋によると、岸田首相への2本の電話は14日までにあった。1本はLGBTなど性的少数者への理解増進法案を巡り、慎重な立場の議員からで「解散で仕切り直しては」との内容だったという。この際に同法案に慎重だった安倍晋三元首相の名を引き「安倍さんの恩を大切に」と付言。首相は「(安倍氏の)国葬を進めたのは私だ」などと強くたしなめたとされる。

 もう1本は性犯罪規定を見直す改正刑法の成立に関わってきた議員から。入管法改正案を巡り紛糾した参院法務委員会で「解任決議にさらされた杉久武委員長(公明党)が関係修復に努め成立を目指した」と報告。「衆院からの一連の協議で与野党が歩み寄ったのも女性の人権を守るために不可欠だから。台無しにしてはいけない」と解散で成立が見送られることへ懸念を訴えたという。首相は「確かに」と応じたとされる。

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