富山県にある黒部峡谷の電源開発の歩みと雄大な自然に触れる「黒部峡谷パノラマ展望ツアー」が16日、始まった。初日はあいにくの雨となったが、参加者は普段見られない関西電力の施設を見学するなどして楽しんだ。2024年の黒部宇奈月キャニオンルート一般開放に伴い、現在の形でのツアーは今年で最後となる。
ツアーは県や黒部市、関電などでつくる「欅平(けやきだいら)パノラマ新周遊ルート運営協議会」(会長・上坂展弘黒部市副市長)が、北陸新幹線の開業した2015年から実施している。
参加者は黒部峡谷鉄道のトロッコ電車で終点・欅平駅に到着。専用列車が故障していたため、別のトロッコ電車に乗り換えて関電の工事用区域を進んだ。
ダム建設のために造られ、キャニオンルートの一部でもある竪坑(たてこう)エレベーターに乗って上部駅(標高800メートル)に到着。資材運搬車両用のトンネルと登山道を歩き、パノラマ展望台(同860メートル)を訪れた。ガイドから電源開発の歩みについての説明も受けた。
福島県会津若松市、会社員、小林里美さん(48)は「雨であまり景色が見えず残念だったが、トンネルなど普通は入れない所を見られてよかった。キャニオンルートにも行ってみたい」と話した。
キャニオンルートが一般開放されれば、展望ツアーは時間帯や立ち入り区域の調整が必要になる。来年以降のツアーは内容を再検討して行う予定。
展望ツアーは11月13日まで、毎週金曜から翌週の月曜に1日3回実施。定員は計約9千人で、既に約2千人の予約が入っている。問い合わせは黒部・宇奈月温泉観光局、電話0765(57)2850(平日午前9時~午後5時)。
キャニオンルート開放を誘客の起爆剤に
2024年6月の黒部宇奈月キャニオンルート一般開放を観光誘客の起爆剤にしようと、県や黒部市は受け入れ体制を整えている。
キャニオンルートは、黒部峡谷鉄道終点の欅平と黒部ダムを結ぶ約18キロの物資輸送路。上部専用鉄道やインクラインなどを乗り継ぎ「高熱隧道(ずいどう)」を通る。旅行商品の販売は24年1月の予定で、年間で最大1万人を受け入れる。
県はルートの起点となる欅平駅周辺のバリアフリー化を進めるほか、ガイドの養成や観光事業者のプロモーション支援などに取り組む。
黒部市は宇奈月温泉街の魅力を高めようと、宿泊施設の改修などを支援。旅行者の周遊を促すため、サイクリング観光に向けた環境を整備する。