次期衆院選の自民新長崎1、3区支部長 情勢調査が“当落”左右

新支部長を発表する森山選対委員長=自民党本部

 自民党は16日、次期衆院選公認候補となる支部長の選定で、新長崎1区に下条博文県議、同3区に会社員の金子容三氏を選んだ。決定に至るまで、支部長候補らは党や派閥幹部詣でを繰り返し、熾烈(しれつ)なロビー活動を展開。最後は情勢調査の結果や地域支部の推薦状況が“当落”を左右した。
 「北村の遺志ですよ」。先月末、党本部。新3区の支部長候補となった山下博史県議と共に上京した田中愛国県議は、向き合った森山裕選対委員長に強調した。
 新3区エリアの大半を占める現4区の前支部長、北村誠吾氏は不出馬表明と同時に山下氏を後継指名し、先月20日に亡くなった。他の候補が台頭する前に、自身の選挙を支えてきた山下氏の支部長就任へ流れをつくる算段だった。
 ところがそうはならなかった。
 「宏池会(岸田派)が鍵を握る。回りなさい」。森山氏は田中氏らにこう告げた。容三氏の父原二郎氏はもともと同派で、岸田文雄首相らとは旧知の仲。その存在が森山氏の念頭にあるのは明白だった。
 党本部関係者は語る。「金子氏と北村氏では派閥への貢献度や派内の影響力の差は明らか。“履歴書”が二つ並んでいたら、金子氏の方に手が伸びるのは永田町ではごく自然な流れ」
 容三氏は出馬の意向を固めるや、ロビー活動と並行して、4月下旬から矢継ぎ早に選挙区内を回って態勢固めを急いだ。各地で後援会を立ち上げ、会長には友広郁洋前松浦市長や一瀬政太前東彼波佐見町長らが就任。選挙区内の大半の支部の推薦を取り付け、県議の一人は「生涯無敗で選挙巧者だった原二郎氏の選挙そのもの」と語る。
 党本部は6月上旬、電話調査で有権者の意向を分析。大票田の佐世保市でも金子氏が優位だったとされる。「当選可能な人を選んだ」。16日、森山氏が記者団に語ったこの言葉に、今回の選考は集約されていた。
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 一方、新1区の支部長ポストを射止めた下条氏。早くから選挙区内の地域支部や職域の推薦集めに奔走していた。上京しロビー活動も展開した。
 県連内には以前から「茂木敏充党幹事長は1区に若手の女性候補を希望している」とのうわさが飛び交っていた。下条氏は第1候補として上申されたが、党本部でひっくり返される可能性もあった。
 前回の2021年衆院選。党は安倍晋三元首相の元秘書を現1区に擁立したが、国民民主党の現職、西岡秀子氏に大敗。自民党関係者は「党本部は同じ女性で、若い候補でなければ対抗できないと考えている」と読む。
 それを裏付けるような出来事もあった。情勢調査の選択肢には、下条氏と第2候補の浅田眞澄美県議のほか、公募で落選した女性県議と元衆院議員の40代長男の名前も含まれ、県連内で驚きが広がった。「上申されなかった女性や若手の実力も確かめたかったのだろう。党幹事長の意向が働いた」(党関係者)。
 県連は上申の際、支部長選定に客観的理由を求めた。「でないと、挙党態勢で選挙を戦えない」(前田哲也県連幹事長)からだ。ただ、公募で県議らが争う形となり、複数の自民関係者が気にかける。「新1区も新3区も、どこまで一枚岩になれるかは見通せない」


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