飛行機が飛べるのってどんな仕組みを使ってるんだろう?【すごい物理の話】

飛行機が飛べる原理とは?

たいていの人は、ふつうの飛行機には中程と後ろに翼があり、その翼は、主翼、水平尾翼、垂直尾翼だと知っています。ですが、その役割についてはどうでしょう。主翼は、機体を空中に持ち上げる力(揚力)を生むための装置です。主翼後縁の外側に「エルロン」という補助翼が付いています。エルロンは、機体のローリング(横揺れ)を安定させます。水平尾翼は、ピッチング(縦揺れ)を安定させるためで、垂直尾翼は、ヨーイング(上下軸中心の回転)を安定させるものです。

安定した飛行に重要なのは、重心を支点にヤジロベエと見立てて重量の静的バランスがとれていること、飛行中の揚力の発生による重心回りの動的バランスがとれていることです。①では、揚力が重心より前にかかっています。このままだと機首を持ち上げるように時計方向に回転してしまう。そこで、それを打ち消すのに水平尾翼で上向きの力が発生するようにします。②では、揚力が重心より後ろにあるため機体が頭を下げるように回転します。それを打ち消すのに水平尾翼で下向きの力を発生させ、水平を保つようにします。

このように主翼で発生させる揚力と、揚力が作用する位置(空力中心)と重心の位置関係で水平尾翼が発生させる垂直方向の力の向きが変わります。これは設計時に決めることです。また、飛行中でこうしたバランスを崩したときに備え、微調整できるように水平尾翼にはエレベーターと呼ばれる補助翼が付いています。垂直尾翼はヨーイングが起こったときに回転を止めるための板です。

これには、どっちの方向の回転にも対応できるようにラダーという方向舵が付いています。飛行機は、こうした翼によって飛行中の安定を計るわけです。主翼によって発生させる揚力は、翼上面を流れる空気を下向きに流すよう上に凸になる曲線になっています。それは、翼上面に発生する低圧力が向心力となって流れを下向きに曲げるためで、この低圧×翼面積が反力としての上向きの力となります。これが揚力です。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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