「290ydパー3」モンスターホール 選手たちはどう攻める?

ティイングエリアからグリーンを望む(撮影/服部謙二郎)

◇メジャー第3戦◇全米オープン 2日目(16日)◇ロサンゼルスCC(カリフォルニア州)◇7423yd(パー70)

「290yd」と聞いたら、普通は「ああ、短いパー4ね」となるところだが、もしもパー3だったとしたら…もうお手上げだろう。その地獄のような距離のパー3が、今年の「全米オープン」が開催されているロサンゼルスCCの11番ホールなのだ。

ホールの状況を説明すると、ティイングランドはコース内の高台にあり、豪快に打ち下ろすロケーション。ティから見たグリーンの印象は、砲台のような形で両サイドが落ち、形状は縦長、グリーン面はポテトチップ状にうねっている。風は基本的に南風なので右からフォローのケースが多い。ティの位置は日によって変わるが、一番後ろのティを使った2日目は297yd(グリーンセンターまでの距離)。手前のティを使った初日は254ydだった。

グリーンは縦長で砲台状になっている(撮影/服部謙二郎)

主催する全米ゴルフ協会(USGA)の公式サイトには「左サイドの入口を使えばスロープを使ってグリーン手前にあるピンは寄せられる。もし奥や右にこぼれてしまったら、だいぶ難しいアプローチが待っている」と攻略法が載っている。見た目の印象だと、確かに右サイドに落とすとノーチャンス。左サイドをうまく使って、"寄せていく感覚“が必要なのだろう。

さてこの日、まさにお手本通りに左からの傾斜を使ってピンに寄せたのが松山英樹だった。ピン位置はエッジから27yd奥(右から6yd)に入っており、打ち下ろしを入れてティからエッジまで250yd、ピンまで約280ydという計算だった。

松山が手にしたのは3番ウッド。得意の低いフェードボールで左サイドのスロープに向けて打ち出し、傾斜なりにピン方向に寄せるスーパーショットだった。3mのバーディパットこそ外したものの、これ以上ない完璧な攻め方だろう(風はちょっとアゲンストに感じた)。初日は1打目を右手前のバンカーに入れてしまい、2打目はグリーン左奥にオーバーしてダブルボギーとしていただけに、リベンジ成功といったところか。

松山英樹は練習日に11番のティショットを3Wで打っていた(撮影/中野義昌)

同組のブルックス・ケプカは3番アイアンが当たらず、左手前の花道にショートし、なんとか寄せてパー。ロリー・マキロイ(北アイルランド)は右手前のネイティブエリアから寄らずのボギー。まさに罠にハマった形になった。

この日、11番でバーディを獲ったのは156人中たったの11人(パー81人、ボギー59人、ダブルボギー5人)。その中のひとりが石川遼だった。キャロウェイ「APEX UW」の3番でグリーンに乗せ、ピンからはだいぶショートしたものの、約16mのロングパットを決めた。

「逃げ場(がない)というか、まったくゴルフをさせてくれないセッティングじゃない。長いというだけで、パー5でグリーンを狙っていくような気持ちで、ここから3打で上がれたらいいなという気持ちでやりました」と、さすがのマネジメント。

ティイングエリアからは奥にビル群が見える(撮影/服部謙二郎)

ちなみに2日目のホール難度ランキングで11番は全体の4位(平均スコア3.37。最も難しかったのは7番パー3)。この日11番でダブルボギーを打ってしまった桂川有人は、「エッジまで250ydはスプーンだと大きいし、その下だと短い。でも右手前のバンカーに入れるよりはいいかなとイメージが出ないままスプーンで打って、結果ボールはグリーンに直接キャリーし、奥にオーバーしてしまいました」とうなだれた。

11番のグリーン脇にいたフォアキャディに話を聞くと、「バーディを取った人はみんなこの左のスロープを使って寄せているよ。午後から風が強くなったから、さらに難しくなっているね」と見解を述べた。最終日の優勝争いは、後半の始めにあるこのモンスターホールがキーになりそうな予感がするが、果たして…? (カリフォルニア州ロサンゼルス/服部謙二郎)。

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