【角田裕毅F1第9戦分析】昨年カナダで掴んだアプローチを今年も継続。手応えを感じて臨んだ初日は一発の速さが課題

 角田裕毅(アルファタウリ)は、F1第9戦カナダGPに向けて手応えを感じていた。

 その理由は角田にとって2年目だった昨年、マシンをより安定して速く走らせるために、セットアップ面でそれまでとは少し違ったアプローチを試したのが、このカナダGPだったからだ。

2023年F1第9戦カナダGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 2022年のカナダGPで、角田は初日に苦しんでいた。フリー走行1回目は14番手、2回目はなんと17番手に終わった。筆者はそのときのセッション後の囲みで角田に「グリッドペナルティが確定しているので、レース用のセットアップを煮詰めていたのか?」と尋ねたところ、角田はそれを否定していた。

「クルマが持っているパフォーマンスを引き出すために、自分のドライビングも上げていかなくてはならないんですが、いまのところはあまりうまく行っていないという感じです」

 角田のドライビングスタイルはリヤが不安定なマシン、つまりオーバーステア傾向のセットアップを好む。しかし、それではターンインでステアリングを鋭く切れる一方、低速コーナーの立ち上がりでトラクション不足になり、タイムが伸びない。ストップ&ゴー型のモントリオールはまさにそうだった。

 そこで角田は「速く走るためにエンジニアと一緒に考えて、タイムアップにつながるのなら、リヤのスタビリティを上げる」という手をオプションのひとつに持つようにしていた。

 20番手からスタートした角田は、その新しいアプローチで日曜日のレースでは終盤にポイント圏内まで巻き返していた。残念ながら、2度目のピットストップ後に単独クラッシュし、結果には繋がらなかったが、新しいアプローチに可能性を感じた角田はその後のグランプリでも継続し、今シーズンも引き続き採用している。

 新しいアプローチで臨む2度目のカナダGP。初日を終えた角田は、「予選一発の速さはまだ引き出しきれていない」と多くの課題を残した。ただし、初日に順位が下位に沈んでいても、今年の角田は予選または決勝レースで巻き返して、レースでは常にポイント争いをするポジションまで上がってきている。モナコGPとスペインGPで逃したポイントを今度こそ掴みきってほしい。

2023年F1第9戦カナダGP インタビューに応じる角田裕毅(アルファタウリ)

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