現行マシンを抑えてコルベットC7 GT3-Rが優勝。笹原右京“監督”デビューウィンに華を添える

 6月17日、静岡県の富士スピードウェイでファナテックGTワールド・チャレンジ・アジア・パワード・バイAWSの2023年第2ラウンド決勝レース1となる第3戦が行われ、ビンゴ・レーシングの9号車コルベットC7 GT3-R(武井真司/飯田章)が総合優勝を飾った。

 第1ドライバーの武井が予選Q1で好走をみせ、決勝レース1は2番グリッドからのスタートとなった9号車コルベット。スタートドライバーを担当した武井は、スタート直後のTGRコーナー、コカ・コーラコーナーで後続のマシンにオーバーテイクを許し、オープニングラップを4番手で終えた。

 武井はこのときの状況について、「無理にインを抑えるよりは、自分の順位を守って前に付いていくことが大事だと思ったので、落ち着いてスタートは走りました」と、接触を避けポジションキープを優先したと振り返る。

 さらに2周目には、ダンロップコーナーで発生したアクシデントによりセーフティカーが導入されるも、リスタート時のバトルを冷静に対処し順位をキープする走りに徹する。

 その後武井は他のドライバーに劣らないペースで周回を重ね、ピットウィンドウがオープンになったタイミングで上位勢のなかで先行してピットへ向かう。第2ドライバーとしてマシンに乗り込んだ飯田はアウトラップに好走を披露し、9号車コルベットはピットイン組のトップに浮上した。

2023GTワールドチャレンジ・アジア第3戦富士 ビンゴ・レーシングの9号車コルベットC7 GT3-R(武井真司/飯田章)

 飯田はアウトラップについて、「ピットを出るときには、ちょっとライバルに負けていると思っていました。コースインしてからはコールドタイヤでプッシュして、そのまましばらくプッシュし続けていました」と振り返る。

 飯田のプッシュにより、9号車コルベットは遅れてピットインした上位勢をアンダーカットすることに成功。その後は「後ろより自分たちのほうがペースがいいということがわかったので、そこからは少しずつタイヤをマネージメントしながら走り続けました」と、ペースをコントロールする走りに切り替え、スティント後半の争いに備える。

 しかし、2番手以下のクルマが僅差で争っていたことも助けとなり、9号車コルベットはそのままリードをキープしてトップでチェッカーを受けた。

 武井は「スーパーGTと併催されたレース(2019年のauto sport web Sprint Cup)で同じコルベットに乗って3位表彰台に上がったことはあるのですけど、今回にようにガチンコで争って勝つことができたのは初めてだったので、めちゃくちゃ嬉しいです」と、自身がドライブし続けてきたコルベットC7 GT3-Rでの勝利を喜ぶ。

 そして飯田も「自分自身、4年間くらいGTカーに乗っていなかったので、この週末はあまり調子に乗らないように徐々にペースをあげていきました。それでやっと今までの錆が落ちたので、決勝は今までのレース経験を活かしつつ真剣に走れたと思います。あと、この富士はやっぱり僕のホームコースなので、そういった意味ではすごく楽しく走らせてもらいました」と、ひさびさのレースで優勝を遂げられたことを喜んだ。

2023GTワールドチャレンジ・アジア第3戦富士 ビンゴ・レーシングの武井真司/飯田章(9号車コルベットC7 GT3-R)(武井真司/飯田章

■笹原右京“監督デビューウィン”「でき過ぎです」

 また、今回のレースでビンゴ・レーシングのチーム監督を務めたのは、今大会が自身の監督デビューとなった笹原右京だ。

 チーム監督を務めることになった経緯について笹原は、「ビンゴ・レーシングさんが今回のレースにスポット参戦すると聞いて、代表の武井さんからお話を頂きました。ビンゴ・レーシングさんには昔からお世話になっていますので、今回は監督というかたちでレースに携わらせてもらっています」と説明。

 そんな初監督レースとなったGTWCアジア第3戦でいきなり優勝を達成した笹原。自身の“監督デビューウィン”となった決勝レース1については、「でき過ぎの展開でしたね」と喜びを語った。

「まず武井さんが、予選でもポールポジションを獲ってしまうのでではないかというほど調子が良かったです。(飯田)章さんも決勝でずっと一定のペースで走ってくれていました。メカニックの皆さんも落ち着いてピット作業をこなしてくれましたし、周りの展開も、これでもかというくらいすべてウチのチームに向いてくれたので、優勝することができました」

 さらに笹原は「この勝利はチームのみんなが、しっかりと準備してきてくれたおかげなので、僕は無線で話していただけです」と謙遜しつつチームの活躍をたたえた。

 その無線については、「自分がドライバー目線でエンジニアや監督に『こういったインフォメーションが欲しい』と感じていたことを、なるべく伝えるようにしました。また、ドライバーは気持ちの浮き沈みもあるので、チーム側が一定のトーンで話しかけるようにすることも意識していました」と、現役GT500ドライバーならではの工夫を意識したという。

 また、「今回はキャラウェイコンペティションのエンジニアがふたりチームに帯同しているので、英語でいろいろとクルマのことを聞いてドライバーに伝えるという、一種の橋渡し的存在も意識していました」と、自身の英語力を活かしたコミュニケーションにも一役買うことで、チームのパフォーマンス向上に努めたとのことだ。

 日曜の決勝レース2については、「明日はスターティンググリッドが後方からになります。このレースは各メーカーのワークスドライバーが数多く参戦していて、かなりの激戦ですので、明日は今日みたいにうまくはいかないと思います。なので、まずはチームのみんなでレースと、このコルベットというクルマを楽しんで、いいかたちで終えられたらと思います」と監督らしく意気込んだ。

2023GTワールドチャレンジ・アジア第3戦富士 笹原右京監督(ビンゴ・レーシング)

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