“スペアパーツ1.5台分”でル・マンを戦ったグリッケンハウスがワークス勢を上回る健闘「驚くべきことだ」

 2023年WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースで、エントリーする2台がともにポルシェやプジョーのファクトリー勢を上回るトップ10フィニッシュを果たしたグリッケンハウス・レーシング。チームオーナーのジム・グリッケンハウスは、これを「驚くべき結果」であると評した。

■「3位になれたかもしれない」

 ライアン・ブリスコー/ロマン・デュマ/オリビエ・プラがドライブする708号車を先頭に、グリッケンハウスは総合6位と7位に入賞。フェラーリ499P、トヨタGR010ハイブリッド、キャデラックVシリーズ.Rの後塵を拝すことになはったものの、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963の全エントリーと、2台のプジョー9X8を抑える健闘を見せた。

 2021年にデビューして以来、グリッケンハウスはル・マンでは一度もリタイアを記録していない。

「驚くべきことだ」とグリッケンハウスは語った。

「我々は3年間で6つのエントリーを送り込み、すべて完走している。インシデントもあったが、1回のクラッシュを4分半で切り返したのは、かなり良かったと思う」

「特筆すべきは、我々の小さな会社はル・マンでトップクラスの4台のポルシェに勝ったということだ。どれだけクレイジーなんだ?」

「我々にインシデントがなければ、(さらなる上位進出も)不可能ではなかった……ただ、それは誰にでもあることだから、そう言うのは馬鹿げている」

「優勝できたとは言わないが、3位にはなれたかもしれない。これは我々のような小さな会社にとっては、まさに信じられないことだよ」

 チーム代表のルカ・チャンセッティは、ハイパーカー部門のエントリーが昨年より増えたことで、グリッケンハウスは1年前とは大きく異なるレースを経験することになったと語った。

「正直なところ、昨年はトヨタの方がずっと速く、アルピーヌはずっと遅れていたので、我々は完走すれば充分だった」

「今回のレースでは、ライバルと競い合った。我々にはいくつかの問題が発生したが、巨大なマニュファクチャラー相手に戦うことができたのだ。このことがすでに、大きな戦果だ」

 チャンセッティは、開幕前のテスト不足のため、ル・マンで「戦う準備」をするために、シーズン序盤戦のWECを犠牲にしてきたと説明した。

「我々は基本的に、ここまでのレースを利用して、ある意味での準備を整えた」とチャンセッティ。

「だから、ここに来て、クルマは完璧に組み立てられていた。チームは本当に戦う準備ができていた」

「必要なものはすべて揃っていたし、正直なところ、それは計画どおりだった。我々は本当にル・マンをうまくやりたかったし、我々は満足していると思う」

 土曜日の朝にメカニカルトラブルが見つかり、ピットレーンからのスタートを余儀なくされたため、708号車がスタートで1周遅れとなり、グリッケンハウスにとってレースは厳しい幕開けとなった。

「ギヤボックスからオイルが漏れていたんだ」とチャンセッティは説明した。

「レース前日には、通常、最も重要なメカニカルパーツ(エンジン)には何も手を加えないので、我々のミスだ」

「しかし、ディファレンシャルの最大トルク速度に関する規則があるため、我々はディファレンシャルをセットしなければならなかった」

「そのため、ディファレンシャルのチューニングをやり直し、パーツの交換も行った」

「ウォームアップ中にオイルリークに気づいたので、解決する必要があった」

 チャンケッティは、2台のマシンは信頼性の観点からはレースの残り時間を「スムーズに走れた」と語ったが、チームにとってトラブルのないレースとは言えなかった。

 オリビエ・プラと709号車のフランク・マイルーは、日曜日の朝、インディアナポリスで約1時間の間隔で別々のアクシデントに見舞われた。

 プラがバリアに接触したことで708号車はサスペンションにダメージを受け、チームが修理を行うために6分以上のピットストップを余儀なくされた。

 この修理について聞かれたチャンセッティは、「もう慣れたよ」と冗談めかした。

 チャンセッティによれば、このレースではスペアパーツの供給が追いつかなくなり、以前破損したボディワークをテープで留めて、再び使えるようにする様子が見られたと説明した。

「スペアパーツは1台につき1.5キットしかなかったんだ。だから、スペアパーツを使い果たしてしまったし、レース終了までのスペアパーツを確保するために、すべてをリシャッフルしなければならなかったんだ」

709号車グリッケンハウス007(グリッケンハウス・レーシング) 2023年WEC第4戦ル・マン24時間レース

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