〔海外〕2023年4月と5月の災害を振り返る

2023年4月と5月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。n n ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。n n ●4月n 【安全保障】中国軍が台湾周辺で軍事演習を実施n [被害]なしn 2023年4月8日から10日にかけて、中国軍が台湾周辺で軍事演習を実施し、事実上の境界とされた台湾海峡の中間線や周辺空域の防空識別圏を超えて軍用機が台湾に接近するなど、緊張が走った。演習前の5日には、台湾の蔡英文総統が訪米し、アメリカ議会下院のマッカーシー議長と会談していた。今回の軍事演習は会談に対する中国の対抗措置と見られている。n 中国軍は3日間に渡って台湾を取り囲む形で、軍艦が海上封鎖を行う演習を実施した。空母「山東」も参加し、沖縄県宮古島南方の太平洋上で艦載機を約120回発着させた。一部については日本のEEZ(排他的経済水域)内でも実施された。n 演習期間後も、「山東」が台湾周辺の海域に留まるなど、台湾周辺での中国軍の活動を継続させた。また、アメリカ海軍の駆逐艦「ミリアス」も16日に台湾海峡を通過するなど、アメリカによる牽制の動きも見られた。n n 【安全保障】スーダンで国軍と準軍事組織が軍事衝突 自衛隊による邦人の国外退避輸送も行われるn [被害]死者730人以上 負傷者数千人 n 2023年4月15日夜、スーダンで国軍と準軍事組織RSF(Rapid Support Forces)が衝突。これを皮切りに首都ハルツームをはじめ、国内各地で激しい戦闘が連日行われた。n これまでに両軍の間で何度も停戦合意が交わされているものの、いずれも期日を守られず戦闘行為が継続された。そのため民間人らの避難や人道支援などが進まないことが問題となっており、犠牲者には民間人も多く含まれている。5月30日時点で少なくとも730人が死亡、数千人が負傷したほか、避難者は100万人以上に上っている。n スーダンでは2019年4月に軍事クーデターが発生し、軍事政権が暫定統治している。RSFは2019年のクーデター前に独裁を続けていたバシル政権が構築し、2013年に発足したものだったが、その後国軍と手を組み、クーデターに加担していた。n クーデターの後、国内の民主派と共に民主化に向けた動きは進められていたものの、2021年10月に再びクーデターが発生し、民主派が排除された。その後は国連などの仲介で民政移行が進められていたが、国軍最高指令官とRSF司令官の対立や軍の再編にRSFが反発したことなどから、今回の軍事衝突が発生した。n 今回の軍事衝突開始後、数日内にアメリカ、イギリス、フランスなど各国はスーダンにいる自国民の待避作戦を開始。日本も4月19日からスーダンにいる日本人について国外避難の準備を開始した。21日から約180人の自衛隊機と5機の輸送機などを順次ジブチへ派遣し、フランスや国際赤十字などと協力しながら、退避を希望している在留邦人とその家族の国外退避にあたった。首都ハルツームから陸路と空路を組み合わせた国外への輸送活動の結果、24日までに58人、28日までには65人をスーダン国外へと退避させた。n 自衛隊機による在留邦人の輸送は2021年のアフガニスタンでの政権崩壊以来、6回目となった。n n 【事件】ケニア南東部で多数のカルト教団信者が餓死 多数の遺体見つかるn [被害]死者90人以上 行方不明者200人以上n 2023年4月15日、ケニア南東部の海岸沿いにある都市マリンディ近郊の森で、餓死したと見られる人の遺体が発見され、森の土地を所有するカルト教団指導者が逮捕された。その後、警察による捜索で、21日に集団墓地を発見。墓地の捜索をおこなったところ、27日までに30人以上が救出され、90人の死亡が確認された。捜査関係者によれば、遺体の大多数は子どもだとされる。また、ケニア赤十字によると250人以上の行方不明者の報告がよせられており、今後死者が増えることも予想される。n 今回指導者が逮捕されたカルト教団は「グッドニュース・インターナショナル教会」と名乗り、2003年から活動していた。「飢えることによりイエス・キリストに会える」とかたり、信者を餓死させていたとされる。指導者は先月にも親が子ども2人を餓死させた事件で1度逮捕されており、釈放されたばかりであった。n ケニア政府は今回の事件をうけ、今後カルト教団に対し取り締まりを行う方針を打ち出した。n n 【事故】インドネシア西部スマトラ島沖でフェリー転覆 11人死亡n [被害]死者11人 行方不明者1人n 2023年4月27日午後、インドネシア西部スマトラ島のテンビラハン発ビンタン島行きのフェリーが転覆し、乗員乗客74人のうち11人が死亡、1人が行方不明となった。残る62人は救出された。n フェリーは出港後、およそ3時間程度経過した頃に事故が発生した。インドネシア当局によると、漂流していた木材が船に衝突し転覆したと見られている。インドネシアでは4月21日にイスラム教の断食(ラマダン)の終わりを迎え、24日までは断食明けの大祭の期間となっており、帰省シーズンでフェリーにも多くの乗客が乗り込んでいた。n n n ●5月n 【その他】WHOが新型コロナウイルスに伴う緊急事態の終了を宣言n 2023年5月4日午後(日本時間同日夜から5日未明)、世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルスに関する15回目の緊急委員会会合が開催された。委員会の中では依然として新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的なリスクは高いものの、ワクチン接種や集団免疫の獲得などで死亡率や入院患者数の減少が見られるとし、新型コロナウイルスに関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の終了を勧告した。n 翌5日にはテドロス事務局長が委員会の報告と共に、2020年1月30日からおよそ3年3ヶ月続いた新型コロナウイルスに伴う緊急事態の終了を宣言した。今後は、新型コロナウイルスについて現在進行中の健康問題として長期管理する体制へと移行する。n 5月初旬までに全世界で約7億5000万人以上が新型コロナウイルスに感染し、うち690万人以上が死亡したことが確認されている。また、全世界で133億回分の新型コロナウイルスワクチンが接種され、医療従事者のうち89%と60歳以上の成人の82%が最初の1~2回目のワクチン接種を終えた。n 一方でテドロス事務局長は緊急事態宣言の終了は新型コロナウイルスの脅威が消え去ったことを意味しないとも警告。WHOへの調査報告への減少や救命措置へのアクセスが依然として不平等であることに懸念を示すとともに、呼吸器病原体のパンデミック準備計画の更新やワクチン接種率の向上への努力、WHOへの調査報告の協力なども呼びかけた。n n 【自然災害】コンゴ民主共和国で大雨と大規模な土砂災害 数百人が死亡n [被害]死者400人以上 行方不明者数百人n 2023年5月4日、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)東部が大雨に見舞われた。南キブ州では4日に川の氾濫や地滑りなどが発生。2つの集落では学校や市場がある地区に土砂が流れ込んだ。この一連の災害に伴い8日、地元当局は死者が少なくとも400人以上いると発表した。また、国連などによると、数百人が行方不明とされている。n n 【自然災害】ミャンマーにサイクロン上陸 被害多数n [被害]死者400人以上 家屋全壊2000軒n 2023年5月14日、大型のサイクロン「モカ」がベンガル湾を北上し、ミャンマー西部のラカイン州に上陸した。n このサイクロンの影響で、ミャンマーではラカイン州を中心に家屋の倒壊や送電線の切断などの被害が発生している。また、死者は400人以上とされているが、この死者数は政権を握る軍に敵対する民主派組織の発表によるものであり、軍は詳細な被害状況を明らかにしていない。n 今回サイクロンに襲われたラカイン州は、国内難民となっている少数民族ロヒンギャの居住地。サイクロンに乗じて軍が被災者を襲撃しているとの情報もあり、被害の調査や被災者への支援が十分に行えない状況となっている。n また、ミャンマーの隣国のバングラデシュでも、ミャンマーから逃れてきたロヒンギャの難民キャンプをサイクロンが襲い、避難用のシェルターが吹き飛ばされるなどの被害が出ている。n n 【自然災害】グアム付近を台風が通過 ほぼ全世帯で停電 およそ1週間空港閉鎖n [被害]停電5万1000軒 全島で断水n 2023年6月24日から25日にかけて、アメリカ領グアム付近を台風マーワー(MAWAR・台風2号)が通過し、グアム全域の建物やインフラに大きな被害をもたらした。グアム北部のデデドでは24時間雨量約622mmを観測したほか、各地で24時間雨量が500mmを越えた。また、停電や断水が発生し、特に電力は、一時約5万2000軒のうち約1000軒を除いて供給が途絶えた。このため、医療機関などでも長時間にわたって予備電源を使用するなどの事態となった。n この台風により、玄関口であるグアム国際空港でターミナルビルが損壊するなどの被害が発生し、空港が数日間にわたって閉鎖された。28日までに滑走路の運用は再開されたが、旅客便の発着は30日からの再開となり、この間訪れていた観光客は足止めを余儀なくされた。n なお、グアムの知事の発表によると、今回の台風による死者や重傷者の報告は無かったという。

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