〔国内〕2023年4月と5月の災害を振り返る

2023年4月と5月に発生した国内での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。n n ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。n n ●4月n 【事故】沖縄県宮古島沖で陸上自衛隊のヘリコプターが墜落n [被害]死者5人 行方不明者5人n 2023年4月6日15:56頃、沖縄県宮古島市の宮古島と伊良部島の間の海上で、陸上自衛隊の第8飛行隊所属のヘリコプターが行方不明となった。事故当時、機体は空からの地形偵察のために宮古島周辺で飛行を行っており、同機には第8師団の幹部5名、第8飛行隊の隊員5名など計10人が搭乗していた。n 海上での捜索では宮古島の沖合でヘリコプターの回転翼やヘルメットなどの部品が見つかり、その後海底に機体が沈んでいる可能性があるとして、16日から飽和潜水と呼ばれる特殊な潜水を行っての捜索がはじまった。この潜水による捜索で16日に海底で5人とヘリコプターの胴体とみられる部分を発見、18日までに5人全員の死亡が確認された。また、18日には1人が新たに発見されている。n 事故を起こした機体は行方不明の2分前まで管制と通常の交信を行っており、緊急を知らせる信号もなかった。このことから、機体に急に大きなトラブルが発生し、緊急を知らせる信号の発信も難しかったとみられている。この事故に関連して陸上自衛隊は全国に配備している事故機と同じUH60JA型機の飛行について、災害派遣をのぞいて飛行を見合わせた。n 事故当日に中国海軍のフリゲート艦が沖縄本島と宮古島の間にある海域を太平洋に向けて航行していたことや、南西諸島を管轄する第15旅団所属ではなく、第8師団のヘリコプターが事故にあったということがあり、中国軍の動きと事故に関係があるのではないかという見方も広がった。これに対し防衛省は、中国海軍の情報収集線の航行時刻と事故のあった時間は大きく異なることから、中国軍との関係を否定している。また今回の事故に関連する中国軍の動向は現在のところ確認されていないともしており、今後、事故原因の究明を進めることにしている。n 陸上自衛隊第8飛行隊は熊本県益城町にある高遊原(たかゆうばる)分屯地を拠点に活動する航空部隊で、第8師団に所属する。第8師団は有事の際には南西諸島への展開も想定される「機動部隊」に位置づけられている。n n 【安全保障】北朝鮮が弾道ミサイル発射 北海道周辺への落下の可能性でJアラート発令n 2023年4月13日07:22頃、北朝鮮は首都の平壌近郊から弾道ミサイルを東方向に向けて発射した。n 発射後の分析で弾道ミサイルの一部が北海道周辺に落下することが予測されたことから、政府は07:55、Jアラート(全国瞬時警報システム)を発令、北海道を対象に直ちに建物の中や地下へ避難するよう呼びかけた。日本の領土・領海にミサイルが落下するとの予測に基づき、Jアラートで避難を呼びかける情報が発表されたのは今回が初めてであった。n なお、その後の分析を基に、政府はミサイルの北海道周辺への落下の可能性がなくなったことを公表、最終的にはEEZ(排他的経済水域)内への飛来も確認されず、日本周辺の船舶や航空機を含め被害の報告はなかった。しかし、避難の呼びかけられた北海道では、一時道内すべての鉄道路線で運転見合わせ、高速道路で通行止めとなったほか、学校の授業開始時間の繰り下げなどの影響があった。n 今回のミサイル発射後の対応を巡っては、発射から避難を呼びかけるJアラートの発令まで30分以上を要したこと、Jアラートの発令時点でミサイルの落下予想時刻まで5分程度の時間しかなかったこと、落下の可能性がなくなったことについての情報提供の運用など様々な課題が指摘された。政府はJアラートでの情報提供のタイミングなどは、その時点での分析に基づいて適切に行われたと判断しているが、防衛省を中心に今回の事態を検証する考えを示している。n n 【自然災害】小笠原諸島で地震の発生相次ぐn [被害]なしn 2023年4月21日16:19、父島近海(北緯26.6度、東経142.1度)で地震が発生し、東京都小笠原村母島で震度4を観測した。当初地震の規模を示すマグニチュードは5.6と発表されたが、後に不明とされた。この地震で、母島では10秒ほどの横揺れがあったが、地震による被害は特に確認されなかった。n 小笠原諸島付近では今年に入って地震が続いており、2023年1月16日13:49に小笠原諸島西方沖でM5.9、父島と母島で震度3を観測する地震が発生したのを皮切りに、3月31日19:54には父島近海で地震が発生し母島で震度3が、4月4日16:07にも父島近海でM5.1、母島で震度3を観測する地震が発生するなど、地震が続いていた。n n ●5月n 【地震】能登半島沖を震源とするM6.5の地震 最大震度6強を石川県珠洲市で観測n [被害]死者1人 負傷者44人 全壊18軒 半壊15軒 一部損壊706軒n 2023年5月5日14:42頃、石川県能登半島沖を震源とするM6.5の地震が発生し、石川県珠洲市で最大震度6強の揺れを観測した。この地震の後も、石川県能登地方では地震が相次ぎ、約7時間後の同日21:58頃には、同じく石川県能登半島沖を震源とするM5.9の地震が発生し、珠洲市で最大震度5強の揺れを観測した。n 一連の地震で、転落や家具の下敷きになるなどして1人が死亡、44人が負傷し、700軒以上の住宅が被害を受けた。また、珠洲市では水管橋等の漏水による断水が一時発生した。n この2回の地震のうち、14:42の地震では、2023年2月1日に緊急地震速報の発表基準へ追加された「長周期地震動」の緊急地震速報が初めて発表された。長周期地震動とは、周期の長いゆっくりとした大きな地震動のことで、珠洲市三崎町では長周期地震動の4段階ある階級のうち、上から2番目の「階級3」を観測した。n 今回の震源域では、2020年12月頃から地震活動が活発になっており、2020年12月1日から2022年5月12日までに震度1以上の地震が409回発生している。文部科学省地震調査研究推進本部の地震調査委員会は、一連の地震活動について、地下にある流体(水)の移動が関与している可能性があるとしている。n 気象庁は、石川県能登地方での地震活動は当面継続すると考えられるとして、家具の固定や転倒防止など強い揺れを伴う地震に注意するとともに、地震の震源域が海域にも拡大していることで、海底で規模の大きな地震が発生した場合の津波にも注意するよう呼びかけている。n n 【地震】千葉県南部でM5.2の地震 最大震度5強を千葉県木更津市で観測n [被害]負傷者8人 一部損壊11軒n 2023年5月11日04:16頃、千葉県南部(北緯35.2度、東経140.2度)、深さ40kmを震源とするマグニチュード5.2の地震が発生。千葉県木更津市で震度5強、君津市で震度5弱の揺れを観測した。n 11日夕方までに千葉県で5人、神奈川県で3人の負傷者が確認されているほか、千葉県の住宅11軒が一部損壊した。神奈川県横浜市の一部地域で最大450戸の断水が発生し、首都圏各地のマンションやビルで、エレベーター約6000台が緊急停止した。鉄道ではJR東日本の内房線・久留里線・外房線などで一時運転を見合わせたほか、南関東の各線でダイヤが大きく乱れた。n n 【地震】新島・神津島近海でM5.3の地震 最大震度5弱を東京都利島村で観測n [被害]人的・物的被害なしn 2023年5月22日16:42頃、新島・神津島近海(北緯34.5度、東経139.2度)、深さ約10kmを震源とするマグニチュード5.3の地震が発生した。この地震で東京都利島村で震度5弱の揺れを観測した。n この地震で物的・人的被害はなかったものの、鉄道では神奈川県内の一部路線でダイヤが乱れた。n 伊豆諸島近海は地震が多い地域で、最大震度5弱を観測した22日も昼ごろから揺れを感じる地震が相次いだ。16:42頃発生の強い地震のあとにも、19:46頃にはマグニチュード5.1、最大震度4の地震を観測するなど、翌23日07:00までに最大震度1以上の地震を37回観測した。n n 【事件】長野県中野市で住民や警察官4人が殺害されるn [被害]死者4人n 2023年5月25日16:00過ぎ、長野県中野市で60代と70代の女性2人が30代の男に突然刃物で刺され、2人とも死亡した。さらに男は、110番通報で現場に駆け付けた40代と60代の警察官2人に対して、パトカーの窓ガラス越しに猟銃で2回発砲、さらに刃物でも襲撃し、警察官はいずれも死亡した。その後、犯人の男は現場近くにある自宅に立てこもった。n 男が立てこもった当時、自宅内には母親とおばがいたが、翌26日00:10頃までに2人とも脱出し、警察によって保護された。そして26日04:30過ぎ、警察と親族の説得に応じた男が自宅外に出たところで身柄が確保された。n 事件の動機として、男は刃物で刺した女性2人に対しては、孤独でいることについて悪口を言われていると思ったと話している。また警察官2人を襲撃した理由に対しては、警察官から射殺されると思ったと話しており、警察はさらなる動機の解明を進めている。n 警察官を襲撃する際に使われた銃は「ハーフライフル銃」と呼ばれるもので、猟銃よりも命中精度が高い銃であり、なおかつ弾も「スラッグ弾」と呼ばれる大型の獣に対して使われるものであった。なお、男は長野県公安委員会から猟銃の所持の許可を受けており、複数の銃を所持していた。

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