父はホロコースト・サバイバーだった
名匠バリー・レヴィンソン監督×『インフェルノ』ベン・フォスター主演最新作『アウシュヴィッツの生還者』が、2023年8月11日(金・祝)より全国公開。このたび6月18日(日)の「父の日」に、レヴィンソン監督とホロコースト・サバイバーの父を持つ原作者よりコメントが到着した。
生還者の息子が父の半生を綴る衝撃の実話
ヒトラーの非道に終止符が打たれてから78年。現在まで、ナチスをテーマとした様々な映像作品が作られてきた。だが耳を疑う知られざる真実は、まだあった。本作は、アウシュヴィッツの生還者の息子アラン・スコット・ハフトが父の半生を書き上げた小説の映画化作品だ。
ナチスが余興のために催した賭けボクシングでユダヤ人同士が闘い、負けた者はその場で殺された――という事実は、主人公ハリー・ハフト(ベン・フォスター)が抱える“過去”の入り口にしか過ぎなかった。言葉を失いながらも、その先に待つ無償の愛に救われる究極のドラマが描かれている。
生存者が払う犠牲を描いた背景――監督の幼少期の思い出
『レインマン』(1988年)でアカデミー賞監督賞、ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたバリー・レヴィンソン監督が、アウシュヴィッツの知られざる真実を描いた背景には、自身の経験が関係していた。幼い頃、ホロコーストを生き延び心に傷を負った客人が自宅に2週間ほど滞在していたことがあったそうだ。
レヴィンソン監督は初めて本作の草稿を読んだ際、幼少期の出来事が一気に蘇ったと明かす。
はるか昔、苦悩を抱えている人の声を聞いていた夜のことがフラッシュバックしたよ。当時は彼がなぜ苦しんでいるのか分かっていなかった。彼の過去を知ったのは、それから何年も経ってからだったんだ。
続けて監督は、「収容所から戻ってこられた人の多くは生涯被害者であり続けたんだ。今では<PTSD>として知られている症状に苦しみ続けた。この映画は『生存者が払う代償とは?』を問題提起しているんだ」と、本作を通して戦争を生き抜いた者にしか知りえない真実や苦しみ、心の葛藤を発信したいと胸の内を語った。
そしてPTSDを抱える父と交流が少なかったという原作者アランは、「執筆を終えて父が耐えなければならなかったものを直接知り、なぜ父があんな人になったのか、理解することが出来ました。私は、父を愛しています」 と話し、父の半生を綴った小説を書き上げたことで父への愛を再認識したようだ。
『アウシュヴィッツの生還者』は2023年8月11日(金・祝)より新宿武蔵野館ほか公開