光源氏の絵日記に人々は感涙した!?冷泉帝の寵愛を得るために絵合を行った!【図解 源氏物語】

斎宮女御が寵愛を受ける

源氏は藤壺と相談して、六条御息所から託された前斎宮を冷泉帝の後宮に入れます。入内した前斎宮は斎宮女御(さいぐうのにょうご)と呼ばれるようになりました。それに先立ち、権中納言(ごんのちゅうなごん 元・頭中将)の娘が入内して弘徽殿女御となっており、冷泉帝の寵愛は、年齢が近い弘徽殿女御に注がれていました。冷泉帝は、年上の斎宮女御に、最初は気詰まりな印象を抱き、親しんだ弘徽殿女御のもとへ多く通いますが、次第に形勢が逆転しはじめます。そのきっかけは絵でした。帝はたいへん絵が好きで、描くのも上手でした。斎宮女御も絵画に造詣が深く、描くのも上手だったので、帝は一緒に絵を描きながら惹かれていったのです。

権中納言は「負けるわけにはいかない」と、優れた絵師に趣向をこらした絵を描かせて献上します。源氏は紫の上とともに秘蔵の絵を選んで整えて対抗しました。絵による競い合いが続き、藤壺の御前で絵合(えあわせ)が行われますが、決着はつきません。そこで3月、帝の御前で再び絵合が行われました。絵日記が出されると、そのすばらしさと同情を禁じ得ない内容が人々の感涙を誘い、斎宮女御が勝利を収めました。自らの栄華を実感した源氏は「昔の例でも、若くして上り詰めた者は長生きしない。いずれは引きこもって命を永らえたい」と思い、嵯峨野に御堂をつくらせ出家を考えはじめますが、子どもたちの行く末を見届けたいとも思うのでした。

斎宮女御・・・住まいの名称から梅壺、または梅壺の御方とも呼ばれた。

政治闘争代わりの絵合の勝敗

絵合で登場する絵巻は、『伊勢物語』『竹取物語』『うつほ物語』など、当時の実在の物語が取り入れられている。絵の作者も当時の名匠とされる絵師・書家の名を出し、現実と虚構をうまく交えながら展開していく。数々の物語絵が出されたが、最後に光源氏が出した須磨での絵日記が決め手となり、光源氏側が勝利した。この勝利によって、斎宮女御は冷泉帝の後宮で優位になる。光源氏はおのれの栄達をますます実感することとなる。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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