ジェットエンジンはどんな仕組みで推力を出すんだろう?【すごい物理の話】

プロペラの空気の流れ

飛行機のプロペラ、ジェットエンジン、どちらも原理的には、前方から入った流れを加速させて後方に押し出す(噴射)ことによって推進力を得ます。推進力Taは、噴射速度vjと飛行速度vaを用いて、Ta=m(vj-va)で表されます。ここでのmは、流れの質量流量(1秒間に流れる気体の質量[kg/s])です。

プロベラの場合の気体は空気で、ジェットエンジンの場合は燃料の燃焼ガスと空気の混合気体です。エンジンの動力でどのくらい気体の運動量(質量×速度)を大きくできるかが推力の大きさに影響します。ジェットエンジンは、圧縮機、燃焼室、タービンで構成されていて、「ガスタービンエンジン」といいます。これで仕事を得るには、ブレイトンサイクル(熱力学サイクルの1つ)が基本です。

熱効率は、タービン入口における圧力比(入口圧力/出口圧力)が大きいほど効率がよくなります。タービン出口圧力は大気圧なので、タービン入口圧力を上げることで効率はアップします。そのため圧縮機によって圧力を高めることと燃焼温度を上げることでタービン入口圧力が上がるのです。また、上空に飛んでいくと大気圧が下がるために効率が上がり、燃費効率も高まります。

圧縮機の役割には、圧力を高めるということ以外に、大量の空気を吸い込んでギュッと圧縮し、質量流量を増やす役割もあります。そうして燃焼器で燃焼ガスが高温になると気体は膨張していき、狭い噴射口から噴出することでvjは速くなります。このことも推力を増すことにつながるわけです。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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