稚ナマコ ゆりかごで天敵から保護 個体数増へ倉敷の企業など開発

海洋建設が開発した「ナマコのゆりかご」。円柱状に並べたホタテの貝殻をネット(右)で覆って使う

 人工漁礁を手がける海洋建設(倉敷市大畠)は、漁獲量が減少傾向のナマコの個体数を増やすため、放流した稚ナマコを一定の大きさになるまで保護する設備を、国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所(北海道)と開発した。網目状のポリエチレンの中にすみかとなるホタテの貝殻を入れ、その上にネットをかぶせて天敵から捕食されるのを防ぐ。製品名は「ナマコのゆりかご」。

 農林水産省の統計では、国内のナマコの漁獲量は2006年に1万344トンあったが、21年にはほぼ半分の5564トンにまで減っている。一大産地の北海道周辺では、種苗を放流しても漁獲量に結び付かないといった課題があることから、両者が解決策を探るため共同研究を実施。ヤドカリやカニなどに食べられていることが大きな要因と分かり、稚ナマコを保護する設備の製品化に着手した。

 開発した「ナマコのゆりかご」は幅60センチ、奥行きと高さが各55センチ、総重量約45キロ。中にホタテの貝殻を25枚ほど並べた円柱状のパイプ(長さ約50センチ)を上下2段に3個ずつ配置。網の目が数ミリ四方のネットで全体を覆う。ネットは海中で腐食しない高密度ポリエチレン製で、漁港内などに設置して使う。

 ネットの中に稚ナマコを入れて海底に沈めておくと、餌になる微生物などが自然と貝殻へ付着するため、餌を与えなくてもゆりかご内で成長していく。同研究所によると、19~21年度に道内の漁港で行った実証試験では、最初に全長1センチ程度だった稚ナマコが早い個体で約半年で5センチほどに育ち、生存率は70~100%だったという。受注生産で1基13万5千円。

 開発を担当した海洋建設の穴口裕司さん(45)は「移設やネットの取り外しといった作業も簡単で、全国どこの海でも使える。各地の漁港で活用が進み、ナマコの漁獲量の回復につながってほしい」と話している。

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