イザナキノミコトの禊により二十四柱の神々が生まれた後、顔を洗って生まれた三貴子とは?【古事記】

イザナキから三貴子が生まれる

葦原の中つ国へようやく帰り着いたイザナキノミコトですが、その体や身の回りの品々には黄泉の国の穢(けが)れが染みついていました。まずは禊(みそぎ)をして、それらを清めなければなりません。

そこで、イザナキノミコトは、竺紫(つくし) の日(ひ)向(むか)の橘(たちばな)の小門(おど)の*阿波岐原(あわきはら)へ出かけ、禊をするため、身につけていたものを次々とはずしました。すると、杖・帯・小物入れ・上着・袴・冠・腕輪などから、あわせて十二柱の陸路の神と海路の神が生まれました。

「上流の流れは急だが、下流は穏やかだ」

イザナキノミコトがそういって、川のなかで禊をはじめると、次々と神が生まれました。全部で二十四柱の神々です。

さて、イザナキノミコトは最後に顔を洗いました。左の目を洗ったときに生まれたのが太陽の神、アマテラスオオミカミ(天照大御神)、右の目を洗ったときに生まれたのが月の神、ツクヨミノミコト(月読の命)、鼻を洗ったときに生まれたのが嵐の神、タケハヤスサノオノミコト(建速湏佐之男の命)です。

*阿波岐原は、宮崎市の江田神社付近とされる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古事記』
監修:吉田敦彦 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1934年、東京都生まれ。東京大学大学院西洋古典学専攻課程修了。フランス国立科学研究所研究員、成蹊大学文学部教授、学習院大学文学部日本語日本文学科教授を経て、同大学名誉教授。専門は、日本神話とギリシャ神話を中心とした神話の比較研究。主な著書は、『日本神話の源流』(講談社)、『日本の神話』『日本人の女神信仰』(以上、青土社)、『ギリシャ文化の深層』(国文社)など多数。

古典として時代を超え読み継がれている『古事記』。「八岐大蛇」、「因幡の白兎」など誰もが聞いたことがある物語への興味から、また、「国生み」「天孫降臨」「ヤマトタケルの遠征」など、壮大なスケールで繰り広げられると神々の物語の魅力から、最近では若い層にも人気が広まっている。本書は神話・物語を厳選して収録し、豊富な図と魅力的なイラストで名場面や人物像を詳解した、『古事記』の魅力を凝縮した一冊!

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