茨城・取手の双葉 自宅戻れず、進まぬ復旧 浸水、カビ、風呂故障・・・

扇風機で床下や家族の思い出が詰まったアルバムを乾かす男性。壁には浸水の跡が残る=取手市双葉地区

台風2号や梅雨前線の影響による大雨で約600棟が浸水した茨城県取手市双葉地区で、いまだに家に戻れない人たちがいる。床上まで浸水した住宅では、ぬれた床や壁からカビが生えたり、給湯器が壊れて風呂に入れなかったりと生活環境が悪化。一部の住民は市営住宅や子どもの家に身を寄せながら、自宅まで通って片付けを進めている。

「俺にとっては大切な思い出でも、汚れて臭いのついた写真は子どもにとってはごみ。取っておけないから捨てなくちゃ」。市営住宅から自宅の片付けに通う松本喜平さん(72)は残念そうに話す。

松本さん宅は床上60~70センチほど浸水。2階に続く階段の途中まで水に漬かり、救急隊員に救助された。先週までは避難所に身を寄せていたが、閉鎖に伴って市営住宅に移った。

1階の家具やトイレ、風呂も汚水混じりの水に漬かった。水を吸って重くなった畳は息子と処分。床板はボランティアに剥がしてもらった。18日は扇風機で床下や家族のアルバム写真を乾かしながら、片付けと清掃に明け暮れた。子どもの運動会や勤め人時代の慰安旅行の写真も、「最後に目に焼き付けてから捨てた」と声を震わせる。

浸水した家にはカビも広がる。「食器やトイレもカビだらけ。弱っているところにこれでは、身体を壊しそうで家に戻れない」と話す。「梅雨や台風の本番もこれから。もう雨がトラウマ」と不安がる。

床上80センチの浸水被害にあった70代の男性は、茨城県龍ケ崎市に住む娘宅に夫婦で間借りし、レンタカーで自宅まで片付けに通う。「早く家に戻りたいが、家財道具は全部なくなった。リフォームが終わるのもいつになるか分からない」と嘆く。

近くに住む娘の家に避難している男性も「給湯器が使えず、2階に家財道具を運んだため生活できる空間がない」とし、「早く家に戻りたい」と天を仰いだ。

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