衣料販売やジム…大分県内に無人店続々 店員に気を使わず、割安サービス【大分県】

顧客をつかむ県内の無人店舗。上から時計回りに「複合型無人販売所 24365」(大分市新栄町)、無人古着屋「m.cuore(エムキュオーレ)」(別府市亀川東町)、無人フィットネスジム「LifeFit 大分駅前店」(大分市末広町)=コラージュ

 スタッフを置かない無人店が県内で相次ぎ登場している。新型コロナウイルス禍をきっかけに非接触のニーズを捉えた営業形態が注目され、感染が和らいだ今も食品・衣料販売やジムといった業種で参入が広がる。店員に気を使わず、ゆっくり買い物ができる点が好評だ。運営する地場企業も人件費を浮かせて割安なサービスを提供するなど、大手にも対抗できるビジネスモデルの可能性を秘める。

 「県内はここでしか手に入らない」。今年2月から大分市新栄町で無人販売所を運営するワールドオフィスの秀嶋良昭社長(55)は自信を見せる。

 北海道・十勝地方のハーブや牛乳で作った調味料、全国で厳選したサツマイモのスイーツ…。静かな店内の陳列棚に、現地で買い付けるなどした都会で人気の商品約50アイテムが並ぶ。

 通販で買い求めれば配送料が高くついてしまう。「お得感」もあり、販売件数は月に延べ約千件を上回り、1日で20万円近く売り上げる日もある。24時間・365日の営業で店名も「24365」にした。

 よく訪れる大分市古国府の主婦高瀬美穂さん(41)は「店員を気にせず、じっくり見て回れるので楽しい」と話す。

 人件費を浮かせられる分、サービス価格を抑えられる。競争力は大手チェーンにもひけを取らない。

 家庭教師派遣などを手がけるディック学園(大分市末広町)は5月、本社ビルにスポーツジムを開いた。15種類のトレーニング機器をそろえ、24時間いつでも利用できる。

 料金は1カ月間約3千円と、有名ジムの半額以下に抑えた。会員は1カ月余りで450人を超えた。決済や入退室の管理も「スマートフォンのアプリで簡単に完結する」(同社)。

 地方都市で起業する手段としても可能性が広がる。

 昨年10月に別府市郊外の亀川地区で古着店を開いた南龍治さん(33)は、接客の代わりに交流サイト(SNS)を活用する。新着商品などを積極的に発信して、立地のハンディをカバーして集客に成功した。

 「リピーターも多い。市内の別の場所に2号店を出す」と手応えを語る。

 新規出店の一方で業績不振により撤退する動きもある。コロナ禍で全国的に増えたギョーザの無人販売所は、需要の落ち込みにより県内でも閉店したケースが出ている。

 専門家は消費者を飽きさせないアイデアが必要だと指摘する。大分大経済学部の仲本大輔准教授(51)=経営戦略論=は「商品やサービスに満足し続けてもらえるよう、仕入れや宣伝に絶えず工夫が求められる」と述べた。

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