仏の日本酒コンクール部門別、兵庫・加西の「朔」が最高賞 コロナ禍で需要減の旅行会社が企画、訪日客獲得も目指す

コメの生産から醸造まで見学、体験できる日本酒「朔」と企画者の(右から)稲岡敬之さん、庄司英生さん、藤本圭一朗さん=ふく蔵

 播磨地域でツアーを展開する旅行会社「みたて」(京都市)が企画し、加西市三口町の酒蔵「富久錦」が醸造した純米大吟醸「朔(さく) RO3BY」が、フランスで開かれた日本酒コンクール「Kura Master(クラマスター)2023」のクラシック酛(もと)部門で最高賞を受賞した。同社は酒文化を巡る旅行を企画しており「受賞をきっかけに、播磨への人の流入を増やしたい」と意気込んでいる。(敏蔭潤子)

 同コンクールは2017年に始まり、23年は純米酒など5部門に計1090点が出品された。フランスのレストランや料理学校関係者、ソムリエらが「料理との相性」を重視して審査している。

 みたてはインバウンド(訪日客)向けに旅行サービスを手配していたが、新型コロナウイルスの影響で需要が激減。富久錦や、酒米・山田錦の生産農家藤本圭一朗さん(38)=加西市上万願寺町=と共同で21年、酒米作りから醸造まで、一本の酒を生み出す工程をインターネットで配信するサービスを始めた。

 同サービスでは、上万願寺町の水田で稲が実り、収穫されたコメが富久錦で醸造される様子を、会員がオンラインで見学。最後に搾りたての日本酒が届く。22年からは、実際に田植えや稲刈り、酒蔵見学をできるツアーを実施している。

 受賞した純米大吟醸「朔」は、自然の乳酸菌を利用した昔ながらの生酛(きもと)造り。21年に収穫したコメで醸造し、約1年間熟成させコンクールに出品した。富久錦の稲岡敬之社長(52)は「寝かせることで味が深化している」と話す。

 藤本さんは「空気が澄んで水がおいしい環境が、うまいコメを育て、うまい酒になった」と地元の自然の豊かさを強調した。

 みたてでは、日本酒と深く関わる播磨地域の祭りや文化、料理もオンラインなどで紹介。同社の庄司英生社長(49)は「日本酒をきっかけに、フランス人にも四季や旬を大切にする感性や地方で育まれた文化を知ってほしい。旅への入り口にしたい」と、インバウンド誘致へ期待を込めていた。

 「朔 RO3BY」は富久錦の直売店「ふく蔵」で販売。6600円(720ミリリットル、税込み)。ふく蔵TEL0790.48.2005

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