桂川有人「これはダメと思って」 気づけばフェードからドローへ

初出場の「全米オープン」を58位で終えた桂川有人(撮影/中野義昌)

◇メジャー第3戦◇全米オープン 最終日(18日)◇ロサンゼルスCC(カリフォルニア州)◇7423yd(パー70)

今週に入ってずっと気になっていたことがある。桂川有人の球がフェードからドローになっているのだ。桂川といえば若い世代の中でも指折りのショットメーカーで、質の高いフェードボールを打っていたと記憶している。

いつからドローに変えていたのか。もちろんフェードも打っているが、どちらかというとドローのほうが多いように見える。アメリカの下部コーンフェリーツアーで戦う中で、ドローに変える必要があったのか。その背景が気になった。

3日目の試合後にその話を桂川に向けると、スイングの話をしたかったのか、堰(せき)を切ったかのように話し始めた。

「そうなんですよ。先週から(改造に)取り組み始めていて。ドローというか、今は右を向くようにしていて、結果ドローになっている感じですかね。大学4年ごろから原因不明の右プッシュに悩まされていて、球が右にバーンと出ちゃうんです。それでスコアを作ろうとすると左を向くしかなくて。左を向いて右プッシュを打つような感じで真っすぐいかせていました」

「それでもいいフェードが打てていればいいのですが、スイング動画などを見ると、『こんなに左を向いていたんだ』というのが最近けっこうあって。自分の中ではそこまで左を向いているつもりはないんですが…これはダメだなと思って。それで、先週(米下部コーンフェリーツアーの試合)から右を向いて構えるようにしているんです。インから球をつかまえるイメージですが、それで今まで出ていた右プッシュが出ちゃうと、はるか右に出ちゃうから、正直右を向くのが怖いんですよね」

最終日はローアマをとった飛ばし屋ゴードン・サージェントと同組(撮影/中野義昌)

3日目の5番のティショットは、まさにその右プッシュが出て、右ラフにつかまってボギー。最終日の6番のティショットでも、あわやOBの右プッシュが出てダブルボギーとしてしまった。まだスイング改造は道半ばなのだろう。このメジャーの厳しいセッティングの中で新しいスイングに取り組んでいること自体驚きだが…。

「17番なんかは右に落ちていくイメージしかないので、右を向くのが本当に怖い。でも今のところ3日間ぜんぶ成功しているから、やり切れているのかな。今週はフェアウェイが右に傾斜しているところが多くて、5番もそうだし、13番もそう。ああいうホールが今の自分はしっかり打てなくて、ドローで傾斜にぶつけられればいいんですが、チーピンが出ちゃう。それを嫌がると右プッシュも出るし。(プッシュも)たまに出るぐらいになれば、もっと戦えるんですがね…」

ドライバーを「スリクソン ZX7 Mk II」、シャフトをUSTマミヤも「Lin-Q Red」へ(撮影/中野義昌)

最終的に4日間を終えて58位と思うような結果を出せず、コーンフェリーツアーの大幅なポイントアップはかなわなかった。それでも「全米オープン」という大舞台で、スイングを改造しながら予選を通ったのは大きな収穫になったはずだ。

「そうですね、その辺は成長しているんで、最後まで成績を出したかったですけど、まだプロ3年目なんでこれからまだまだやることは多い。コーチがいるわけじゃないので自分で考えなきゃいけないのがちょっと辛いですね。答えがわからないし。合っているかどうかわからない感じで戦っている」と、この先コーチをつけることも考えているようだ。

自信なさそうに話す桂川だが、彼の取り組みを評価する人もいる。ブルックス・ケプカのコーチであるクラウド・ハーモン(ブッチ・ハーモンの息子)が、ケプカの横で打っていた桂川のスイングを見て、「あの小柄な日本人選手、めちゃくちゃいいスイングしているね」とスリクソンのスタッフに話していたとか。桂川の新しいスイングは世界のコーチから認められるレベルということ。もうちょっと自信を持っていいのでは…。

このあと桂川は1週休んでから、PGAツアー「ロケットモーゲージクラシック」と「ジョンディアクラシック」のマンデー(予選会)に2週続けて出る予定。24歳の挑戦はこれからも続く。(カリフォルニア州ロサンゼルス/服部謙二郎)

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