ヒョンデ、育成プログラムの再開を発表。スニネンがi20 Nラリー1でエストニアとフィンランドに参戦へ

 ヒョンデ・モータースポーツは6月17日、2022年末に休止したドライバー・デベロップメント・プログラムを再開させることを発表。今季2023年のWRC世界ラリー選手権におけるドライバーラインアップを一部変更し、テーム・スニネンをラリー1ドライバーに昇格させることを明らかにした。

 また、韓国のメーカーは昨年のWRC2クラスでシリーズチャンピオンを獲得したエミル・リンドホルムを陣営に迎えたことをアナウンスしている。

■スニネンをクレイグ・ブリーンの後任に抜擢

 ヒョンデが実施するヒョンデ・モータースポーツ・デベロップメント・プログラム(HMDP)は、将来のWRCスター候補となる才能ある若手ドライバーを発掘・育成するためのプログラムだ。昨年末の休止以来、約半年ぶりに再開された同プログラムにはスニネンとリンドホルムの2名がリクルートされた。

 2022年シーズンに続き今季もWRC2クラスを戦ってきた29歳のスニネンは、今年4月に悲運の事故でこの世を去ったクレイグ・ブリーンの後任ドライバーとして、ラリー1ドライバーへの昇格が決まった。彼はダニ・ソルドと3台目のヒョンデi20 Nラリー1をシェアすることとなり、第8戦エストニアでハイブリッドWRCカーでの初の実戦に臨む。その後は母国ラウンドとなる第9戦フィンランドでもi20 ラリー1のステアリングを握る予定だ。

 元Mスポーツドライバーで3度の総合表彰台獲得経験を持つスニネンの最高峰クラス復帰は、当時ヒョンデい在籍してきたオット・タナクの代役として出場した2021年シーズン第12戦モンツァ以来、約2年ぶりとなる。

 一方、現WRC2クラス王者であるリンドホルムは、コドライバーのリータ・ハマライネンとともにシュコダ・ファビアRSラリー2からヒョンデi20 Nラリー2へとマシンを乗り換え、引き続きタイトル防衛およびクラス2連覇への挑戦を継続していく。

 ヒョンデ・モータースポーツは再編されたHMDPの目的について、チームの未来を構築すること。具体的には、若手ドライバーが次世代のラリー1ドライバー候補になるために集中し、トレーニングを通じてスキルを開発する環境と専用のリソースを供給することとしている。なお、ファブリツィオ・ザルディバールはHMDPの選出外となったが、引き続きWRC2プログラムを継続するという。

 今季よりチーム代表を務めるシリル・アビテブールは、「ヒョンデ・モータースポーツ・ドライバー・デベロップメント・プログラムは、空白を埋めるためにあるのではなく、ヒョンデが若いドライバーの中から多様な選択肢を確保するための戦略的プラットフォームである」と説明した。

「私たちはすでに、テーム(・スニネン)とエミル(・リンドホルム)を中心としたエキサイティングな才能を有しており、プログラムをさらに構築していく中で、彼らの成長をサポートすることを楽しみにしている」と同氏は続けた。

エミル・リンドホルム(右)/リータ・ハマライネン組

■成功を確信。「何度も表彰台に上るチャンスがある」

 また、ヒョンデ・モータースポーツのショーン・キム社長はHMDPの再開がWRCへのコミットメントを強化するものであると付け加えた。

「私たちはすでにティエリー(・ヌービル)、エサペッカ(・ラッピ)、ダニ(・ソルド)という経験豊富なドライバー陣を擁しているが、今後は若い世代にも目を向け、彼らの潜在能力を発揮できるようサポートする方針だ」

「このプログラムによって才能ある若者をサポートすることは、熱狂的なラリーファンとして後進の育成に力を注いできたクレイグ・ブリーンの記憶に敬意を払うことができる。それと同時にWRCに対する我々のコミットメントを強く印象づけることになる」

「ヒョンデのようなマニュファクチャラーが若手ドライバーをサポートすることは、彼らが将来のワールドチャンピオンになるための次のステップに進む機会を与えることになるため、非常に重要なことであると考えている」

 すでにヒョンデi20 Nラリー1でのテストを行っているスニネンは、エストニアでのラリー1デビューが決定した後、次のように語った。

「これはトップクラスのクルマに戻る絶好のチャンスであり、僕はこのような機会を本当に欲してきた」とスニネン。

「エストニアとフィンランドは、ともに僕が以前から強力なパフォーマンスを発揮してきたラリーだったが、限られたテストの中でヒョンデi20 Nラリー1とハイブリッドシステムを学ぶことは、大きなチャレンジになるだろう」

 新しい環境で引き続きWRC2クラスを戦っていくリンドホルムは、「世界的にももっとも実績のあり、成功しているラリーチームの一員になる機会を得たことにとても興奮している」とコメント。

「僕がヒョンデ・モータースポーツに参加することを決めたのは、ラリーでの実績と、特に若い才能を育てるというブランドのコミットメントが大きい。ラリーに対する彼らの明確な献身は、僕自身の情熱や野心と完全に一致するんだ」

「ラリー・エストニアは、僕にとってもチームにとっても完璧なスタート地点だと思っている。今シーズン(の残りラウンド)は何度も表彰台に上るチャンスがあると確信している」

テーム・スニネン(右)/ミッコ・マルックラ組

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