ワインを味わう方法/舌の上で感じられるアロマとは!?【一生に一冊はもっておきたいワインの教科書】

ワインを味わう

ワインを口に含むと、さまざまな感覚やアロマが感じられ、ワインのスタイルや料理との組みあわせについての重要なヒントが得られる。ワインを手にしたら、色を観察したり、香りを感じたり、口に含んでクオリティを判断したり、あらゆる点からワインを味わおう。

味わいとは

口内では複数の感覚がはたらく。

味覚

味覚:舌の特定の部分が甘味、塩味、酸味、苦味、旨味(うまみ)の5つの基本香味に反応する。

触感

触感:口に含んだときに、タンニンなどのワインの成分が、きめの粗さや乾燥した感じを引き起こす。

嗅覚

嗅覚:ワインを飲みながら、口こう腔くう香こう気き を通してアロマを感じている。

ワインを味わうには

手順:ワインを口に含み、口中に行き渡らせる。ワインを転がすようにして、舌を湿らせる。口をすぼめて細く息を吸う。こうすることでワインと空気がなじみ、ワインが「開く」ので、あらゆるアロマを感じることができる。

舌で感じる香味

甘味

口に含んで最初に感じる「アタック」と呼ばれる香味は甘味で、おもに舌の先で感じる。ブドウに含まれていて、発酵時にアルコールにならなかった天然の糖分に由来する。この香味は「モワルー(まろやか)」とも表現され、やわらかさやまるみ、さらには豊かなボリューム感をも感じさせる。アルコールがこうした甘味をさらに増幅する。

酸味

ワインの核をなす香味。アタックの次にくる「中間」と呼ばれる2番目のタイミングで感じられ、だ液の分ぴつをうながし、さわやかな印象を与える。おもに舌の側面で知覚される。一般的に、冷涼な地域でつくられたワインは酸味が強い。また、白ワインはロゼや赤のワインよりも酸味が強く感じられる。

タンニン

最後に頬(ほお)の裏側や口中の粘膜に、独特の感覚が感じられる。苦味に近く、どこかざらざらとしていて、収斂性(しゅうれんせい)*があり、乾いた感覚だ。これは赤ワインに含まれるタンニンという重要な要素。赤ワインの骨組みをなしており、ロゼワインにも少量含まれ、独特の質感をもたらす。タンニンはブドウの果皮、種、果梗(かこう)に由来するが、新しいオーク樽での熟成や、熟成中に木片を加えることでももたらされる。

*ワインを口に含んだときに、口中を締めつけるような感じを与えること。

アルコール

アルコールは口中に粘性を感じさせ、まるみ、心地よさ、ボリューム感をもたらす。アルコール度の低いワインは薄い感覚で、水のように感じるものもある。一方、アルコール度が高すぎると、焼けつくような感覚で、テイスティングだけで疲れてしまうことも。暑い地域のワインはブドウの糖度が高いので、涼しい地域のワインよりもアルコール度が高いことが多い。

ボディ

ワインを口で味わうときは、ボディ(骨格や厚み)も評価する。軽いか、力強いかなど、ボディを通してワインの強さや堅固さを評価する。判断基準となるのが口に含んだときのワインの質感で、シルクのような繊細な生地を思わせるか、ビロードのような重厚な布地に近いかが問われる。こうした感覚は、タンニンやアルコール、糖分など、さまざまな要素の組みあわせに由来し、豊かなワインのスタイルを形づくる。

第5の味覚

1980年代、日本語で「豊かな風味」を意味する「旨味」と呼ばれる第5の香味が認められた。旨味は、アミノ酸の一種のグルタミン酸やイノシン酸に由来する。グルタミン酸もイノシン酸も、味覚を増進させ、多くの食材の味を引き立てるが味はない。旨味は、グルタミン酸を多く含む昆布やトマト、アスパラガスに加え、チーズやしょうゆなどの発酵食品、そしてイノシン酸を多く含む肉類や魚類などにあり、舌全体で感じられる。

舌の上で感じられるアロマ

ワインは香味や質感を出しきったあとも情報を送り続け、口のなかに新たなアロマをもたらす。これは口腔香気と呼ばれ、蒸発したアロマの構成要素が鼻腔に立ちあがってくる現象だ。ここでのポイントはアロマの特性にある。ワインの香りをかいだときと同じアロマが感じられるか。ほかにも感じられるアロマがあるか。ワインを的確に判断し、鼻ではさほど感じられなかった新たな香りを発見する上で、アロマを表現する練習はおおいに役立つ。

持続するアロマ

感覚をめぐる旅もそろそろおわりに近づいてきた。この段階は「フィナーレ」と呼ばれ、ワインを吐き出したあと、または飲んだあとの余韻(口内でのアロマの持続)を評価する。一定時間、テイスティングの余韻が口内に感じられるが、この時間を「コーダリー」という単位であらわす。1コーダリーは1秒に相当する。こうした基準を用いれば、余韻からワインのクオリティについての客観的な印象を表現できる。単純なワインのアロマは短時間しか続かない一方、すぐれたワインは余韻も長い。

ワインの余韻

うれしいことに、ワインのアロマは口のなかに一定時間残る。ただし、余韻とはあくまでアロマのみを指す。酸味、苦味、甘味は対象とならないので要注意。

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気になる中身を少しだけご紹介!ワインのスタイルによってブドウの収穫タイミングが変わる!手摘みと機械の収穫ではどう違うのか?

収穫に適した最良のタイミングって?夜間収穫もある?

ブドウが熟したら、収穫のはじまりだ。収穫は手摘み、または機械で行う。開花してから100日ほどで収穫に入るが、ブドウの成熟度と目標とするワインのスタイルによって、収穫のタイミングを決める。収穫日の決定は難しく、責任重大だ。はやすぎると、実が酸っぱく、糖分の含有量も低い。遅すぎれば、過度に成熟して酸味が足りず、糖度がごく高くなるほか、灰色カビ病に感染するリスクもある。栽培者は時間をかけて天気予報をチェックし、ベストなタイミングを見きわめる。

手作業で収穫するのは負担が重く、時間もかかるが、格の高いアペラシオンや、アクセスしにくいブドウ畑や丘陵、特殊な醸造法を必要とするブドウでは手摘みがふつうだ。たとえば、極甘口ワインに用いる貴腐菌ボトリティス・シネレアのついたブドウは、手摘みと決まっている。シャンパーニュなど一部のアペラシオンの規定でも、収穫は手摘みとされている。手摘みには、摘む人と運ぶ人のチームワークが重要だ。摘む人は剪定ばさみで注意深く房を切り、ケースなどに入れる。運ぶ人は背負いカゴにブドウを入れて列の端まで運び、ケースなどに入れる。ケースならそのままトレーラーに乗せて、醸造所まで運んでいける。

新鮮さを保つため、月と星の明かりのもとライトをつけながら収穫することを夜間収穫という。冷気がブドウの酸化を防ぎ、実に含まれるフレッシュさやフローラルなアロマをあますところなく守ってくれるのだ。

機械収穫は手摘み収穫となにが違う?

収穫機はブドウ収穫のために設計された機械で、1回で収穫のすべての作業を行う。ブドウ樹の列をまたいで進み、振動作用を利用して作業する。機械から支柱とブドウ樹に振動を伝えることで、実がふり落とされるというわけだ。ただし、すべての品種が機械収穫に向いているわけではない。

収穫機が登場したのは1970年代。効率的に収穫できるのが強みで、実が樹になったまま腐るなどという事態を防げる。また夜間にもつかえるので、ブドウの鮮度を保ちやすい。経済面でも機械は文句なしに優秀。機械収穫されたブドウはクオリティが劣ると、まことしやかにいわれているが、新世代の機械なら、しっかり調整して準備をしておけば、抜群のはたらきをしてくれる。

世界中のワインをもっと深堀り!プロヴァンス地方のワインの魅力とは?

ロゼワインといえば、明るいピンク色が特徴だが、プロヴァンス地方のロゼワインは、洗練されたニュアンスの繊細な色あいだ。微妙な色調をあらわすのにつかわれるのは、スグリ、モモ、グレープフルーツ、メロン、マンゴー、マンダリンオレンジなどフルーツの名前だ。

南仏バンドールのワインは気候を活かして作られた!ロゼワインのピンク色はどこからくる?

バンドールのブドウ畑は、サント・ボーム山塊から地中海沿岸にかけ、自然がつくり出した石の積まれた段丘のレスタンクに広がっている。生産者たちは何世紀もかけて、丘陵を開墾してブドウ樹を植えた。海に面した南向きの畑は、年間を通してたっぷりと陽光を浴びる。バンドールの赤ワインは、おもにムールヴェードルからつくられている。ゆっくりと熟すムールヴェードルは、このアペラシオンの中心品種で、アサンブラージュの50%以上を占め、グルナッシュとサンソーをあわせてつかう。前者はボリューム感を、後者は繊細さをもたらす。ワインは長期熟成型で力強く、しっかりとした骨格で、ドライハーブやスパイスのアロマを備えている。

ロゼワインの醸造では、黒ブドウの果皮を漬け込むため、色素が果汁に溶けてピンク色になる。つまり、色はタンク内での果皮と浸漬時間、温度、ほぼ無色の果汁と果皮の接触度に左右される。現在のトレンドは淡いピンク色。ロゼワインの色とクオリティに相関関係はないが、ビジュアルは重要で、選択基準の1つにもなる。淡い色のロゼワインは、より酸が生き生きとしてアロマが豊かだ。濃い色のロゼワインには、上質なメイン料理とあう高品質のものもある。

★ワインを観察してみよう ★各種ワインの醸造法とは? ★料理との組み合わせを知ろう ★フランスだけじゃない!世界のワインとは?
などなど気になるタイトルが目白押し!

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【書誌情報】
『エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテューの一生に一冊はもっておきたいワインの教科書』
エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテュー 著/奥山久美子 監修

エコール・デ・ヴァン・スピリテューはワインの本場、フランス・パリに本拠を置く人気のワイン専門学校。体系的メソッドにもとづくグランド・テイスティングコースから生まれた本書では、パリの授業をまるごと基本からあらゆるワインの紹介までまとめています。さあ、さっそくテイスティングをはじめましょう。実践重視の学校らしい、テイスティングの視点からぜひ試してほしいワインが満載。フランスは圧巻の充実ぶり、ニューワールドもていねいに紹介します。 すぐれたワインはなにが違う?どうやってアロマは生まれる?どうすればアロマを見きわめたり表現したりできる?ワインの特徴や、クオリティが生まれる仕組みも図解だからとってもわかりやすく、簡潔。各章末には、それまで学んだことをベースにトライできるテイスティングレッスンを用意しています。テイスティングのためのワインもしっかり紹介。学んだことが、ワインにどんな違いを生むのかあなたの舌でたのしく復習しましょう。すきま時間にぴったりのテストもあります。この本が、シンプルな「好き」「嫌い」をこえてあなたのテイスティングのアプローチを新たな次元へと導いてくれるはず。

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