イッセー尾形・小日向文世・大泉洋「神業コラボ」に拍手喝采

イッセー尾形、小日向文世、大泉洋が出演する舞台『ART』の大阪公演が、6月15日から開幕。ベテラン俳優3人だけで繰り広げる、先の読めない濃密な会話の応酬に、客席は終始笑いと喝采がわき起こった。

舞台『ART』の劇中シーン

文/吉永美和子

■ 再演で築き上げた「コメディの側面」

フランスの作家ヤスミナ・レザの戯曲を、特に翻訳劇で強さを発揮する小川絵梨子が演出。セルジュ(小日向)が高額で購入した、白一色で描かれた前衛アート作品を、長年の親友・マルク(イッセー)が酷評。もう1人の親友・イヴァン(大泉)も2人の論争に巻き込まれ、心に秘めていたお互いの気持ちがどんどん露わになってしまう・・という内容だ。

舞台『ART』に出演する俳優・イッセー尾形

筆者は幸いにも、新型コロナの影響により、たった3公演で閉幕してしまった2020年の初演を観劇できた。あのときは、3人が拳ではなく言葉で殴り合う迫力に、とにかく圧倒された記憶がある。しかし今回は再演の余裕なのか、大の大人たちが大人げないマウントの取り合いをするバカバカしさについ笑ってしまうという、コメディの側面が際立っていた。

舞台『ART』の劇中シーン

3人がバトルロワイヤル状態でぶつけ合う本音は、実は相手を支配しようとしていたり、完全に見下していたりと、普通に聞けば不快になりそうなものばかりだ。しかし3人とも、コメディの巧さに定評のある名優だけに、ちょっとした言葉の間合いや動き方、お互いの目線の送り方や外し方によっておかしみが生まれ、随所で大きな笑いが起こる。

■ 名優3人の絡み合いに…拍手喝采

長年に渡り、多彩なキャラクターを一人芝居で演じ続けてきたイッセーは、マルクの傲慢さと小心さを、細かい表情や抑揚の使い分けで奥深く表現。一方小日向は、数多くのドラマで「温厚そうだけど最後まで本性がわからない」というキャラを当たり役にしているだけあり、一見紳士的だけど、フッと思わぬ腹の内を見せるセルジュが見事にハマる。

舞台『ART』に出演する俳優・小日向文世

そして2人に遊ばれがちなイヴァンも、イジられキャラがはまり役の大泉に、当て書きされたような役どころだ。劇中では数分間におよぶ長台詞があり、それを言い終わった瞬間には、客席から大きな拍手が。それこそセルジュが買ったアート作品のように、人によって見え方が変わりそうなラストまで舞台に引き込まれ続けたのは、この3人の神業級のコンビネーションゆえだろう。

舞台『ART』に出演する俳優・大泉洋

職人技的な笑いのなかにも、自分自身の現実の友人関係について、自然に思いを馳せてしまう力を持つ『ART』。大阪公演は25日まで「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)にて。チケットは1万1500円で、一部公演は現在も発売中。当日券も含めたチケットの情報は、公式ツイッターなどでご確認を。大阪のあとは福岡、愛知、長野でも公演あり。

舞台『ART』

会場:サンケイホールブリーゼ(大阪府大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7階)
期間:2023年6月15日(木)~6月25日(日)
料金:1万1500円

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