【フィリピン】マニラ空港改修に6800億円[運輸] 財閥連合、年7千万人対応へ

ニノイ・アキノ国際空港の改修事業について説明する財閥連合ディレクターのタン氏=19日、マカティ市(NNA撮影)

フィリピンの財閥6社と米ファンドから成るコンソーシアム(企業連合)は19日、マニラ首都圏の主要玄関口であるニノイ・アキノ国際空港(NAIA)の改修計画を発表した。2,670億ペソ(約6,800億円)を投じて空港の施設や滑走路を刷新し、2048年までに旅客処理能力を現在に比べ2倍超の年7,000万人に増強する。周辺国の空港との競争力が高まりそうだ。

マニラ国際空港コンソーシアムが、マスタープラン(基本計画)を運輸省などに提出した。官民連携(PPP)方式での受注を目指し、早ければ年内の着手、25年間の委託期間を見込む。

コンソーシアムは、アヤラ・コーポレーションやアボイティス・エクイティ・ベンチャーズ(AEV)、アライアンス・グローバル・グループ(AGI)のインフラ部門などで構成する。世界で空港運営を手がける米ファンド、グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)が協力する。

2,670億ペソのうち、設備投資として全体の8割に相当する2,110億ペソを割り当てる。政府への前払い金は570億ペソと、官民連携方式では過去最大となる。経済価値は投資額を上回る4,460億ペソを見込む。

財閥連合のディレクターを務めるアライアンス・グローバルのケビン・タン副会長兼最高経営責任者(CEO)は、19日にマニラ首都圏マカティ市で開いた記者会見で「われわれには資源や技術、実績がある。最初の5年で560億ペソを投じて改修を進める」と意気込んだ。

空港改修により、旅客処理能力を年7,000万人に引き上げる。25年までに年5,400万人、28年までに6,250万人、48年までに7,000万人へと段階的に増強する。

新型コロナウイルス禍前の19年の利用者は4,800万人と現在の処理能力(年3,100万人)を大幅に上回った。ニノイ・アキノ国際空港では今年に入り停電が複数回発生するなど、保守・管理体制の早急な改善も求められている。

マニラ国際空港コンソーシアムは4月、民間企業が官民連携方式の事業を政府に持ちかける「アンソリシテッド・プロポーザル」で改修計画を提出していた。今回の基本計画はこの一環となる。当初は事業費を1,000億ペソ超としていたが、財閥連合は今回示した2,670億ペソは「当初から修正したわけではない」と強調した。

ニノイ・アキノ国際空港を巡っては、政府から持ちかける別の官民連携方式の構想もある。事業費は1,410億ペソを想定している。政府は財閥連合の事業案を採用するのかどうか、まだ結論を出していない。24年1~3月までに決定する見込み。

タイのスワンナプーム国際空港やシンガポールのチャンギ空港は19年の利用者が6,000万人を超え、フィリピンは後れを取っている。ただ世界水準の空港に刷新されれば、国際線の接続性が高まることが期待される。

改修事業が成功するかは不透明な部分もある。首都圏から約35キロメートル北に位置するブラカン州では新マニラ国際空港(ブラカン国際空港)の建設が進む。総事業費は7,350億ペソ。27年の開港後は国内最大の空港となり、機能分散でニノイ・アキノ国際空港の能力増強の必要性が薄れる可能性がある。

ニノイ・アキノ国際空港の改修事業に向けて組織されたフィリピン財閥企業などから成るコンソーシアムの幹部ら=19日、マカティ市(NNA撮影)

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