TOKYO MX（地上波9ch）朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」（毎週月～金曜7:00～）。6月9日（金）放送の「New global」のコーナーでは、米中の覇権争いが激化するなかで中東情勢の鍵を握る“サウジアラビア”について取り上げました。
◆アメリカ、中国とサウジアラビアの関係は？
サウジアラビアを訪問したアメリカのブリンケン国務長官は6月6日、ムハンマド皇太子と会談。経済協力や中東地域の安全保障などに関して協議し、石油の減産などでギクシャクする連携の立て直しを図りました。また、ブリンケン国務長官は「両国の関係強化のためにはサウジアラビア国内の人権状況を改善させることが重要」と強調。
サウジアラビアの人権状況を巡っては、バイデン政権が2018年に起きたサウジアラビア人記者の殺害をムハンマド皇太子が承認していたと断言するなど、緊張状態が続いていました。
そもそもアメリカとサウジアラビア両国の関わりの発端は1930年代。石油技術を必要としたサウジアラビアがアメリカに採掘権を渡し、アメリカが企業として石油を掘り起こす技術を確立。その後、サウジアラビアが石油事業を国営化し、産油国として拡大してきたとあって、アメリカとの繋がりは以前からあります。
一方、6月11日には「アラブ・中国ビジネス会議」が開会するなど、中国とサウジアラビアが急接近。なぜなら、両国ともに同様の人権問題を抱えているから。そして、どちらも西洋の自由主義的な価値観と相容れないだけで、自国の秩序があると主張。米中が対立するなか、中国・サウジアラビアの利害関係が調整されています。
◆サウジマネーが日本のカルチャーを席巻中!?
では、日本とサウジアラビアの関係はどうなのか。一般的に日本にとってサウジアラビアは「エネルギー供給国」というイメージがありますが、国交を開始したのは意外にも早く1955年。エネルギーを欲した日本は、産油国との関係をいち早く築きました。2021年のサウジアラビアから日本への輸出額は約3兆193億円。主な輸出品は石油で、日本からサウジアラビアへは自動車を数多く輸出しています。
ただ、世界的には現在、脱石油、脱石炭、脱化石燃料という動きが加速。それはサウジアラビアにとっては大きな課題となり、新しい産業を作っていこうという動きが盛んです。そうしたなか、日本とサウジアラビアでは「日・サウジ・ビジョン2030」なる枠組みを作り、多くの投資を募っています。
例えば、自動車や家電などの職業訓練やアニメクリエイター向け研修、海水の淡水化事業などインフラからソフトまで多岐に渡り、さまざまな部分で関係を密にしています。この「日・サウジ・ビジョン2030」には金融機関からメーカーまで、日本の多くの企業が参画しており、なかにはアニメやゲーム関連企業も名を連ねています。
ビジネスでサウジアラビアと関係があるという株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは、このアニメ・ゲーム分野においてサウジアラビアは「日本にめちゃくちゃ投資している」と言い、「おそらく近いうちにサウジの協力がなければ立ち行かなくなるぐらい大きなお金が流れ始めてきていて、日本も頑張らないと買われる国になってきている」と案じます。
経済的な繋がりは必要なものの、人権問題を鑑みれば民主主義国家としてどう接するべきなのか。清濁併せ呑むべきか、それとも苦しんでいる人がいるなか、迎合してしまったら民主主義国家として終わりなのか。キャスターの堀潤が「難しい選択を迫られている」と話すと、ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんも「難しいですよね」と同意。
例えば、プレッシャーをかけた結果、投資を糧にサウジアラビアにあらゆる場面で口出しされるのは日本としては難儀な話であり、一方で「日本としては私たちの自由な発想を向こうの国に届けることで何か変わるかもしれないということもある」とマライさん。
ジャーナリストの春川正明さんは「中国とアメリカの対立の狭間で日本の役割はすごく問われている」と強調。日本は、中東に関しては大きなしがらみがないと前置きし、「だからこそ日本が発信できることはある」と主張します。
「アメリカの西洋的な人権への考え方が全てではないことも含め、サウジアラビア、そして中国に対しても言うことは言う。日本の独自のスタンスを発揮できるチャンスだと思う」と語ると、堀も「『我々は西洋的価値ではない』としっかりと言える、それだけの矜持を持っているか。今我々は問われていると思う」と頷いていました。
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＜番組概要＞
番組名：堀潤モーニングFLAG
放送日時：毎週月～金曜 7:00～8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター：堀潤（ジャーナリスト）、豊崎由里絵、田中陽南（TOKYO MX）
番組Webサイト：https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
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