アーモンドミルク、10年間で販売量約30倍 “価格の壁”突破がさらなる成長の鍵

アーモンドミルクの販売量が10年間で約30倍に拡大した。

アーモンドミルク研究会によると、販売量は江崎グリコの「アーモンド効果」が地域限定販売された2013年を起点に右肩上がりに成長を遂げ22年には13年比約30倍の約3万2000klに達した。

販売金額も続伸し、22年は13年比約22倍の155億円を記録した。

市場拡大の背景にはアーモンドミルクの健康価値の浸透と料理への応用のしやすさがある。

慶應義塾大学医学部の井上浩義教授は「アーモンドにはビタミンE、ポリフェノール、オレイン酸、食物繊維、ミネラルなどの栄養成分が豊富に含まれ、中でもビタミンEとポリフェノールは強力な抗酸化作用をもち、酸化ストレスから体を守ってくれる。また、この抗酸化の結果、 血行促進作用など若々しさを保つためのさまざまな作用が期待される。主な成分は固い細胞の中に入っているので、アーモンドの粒を粉砕したアーモンドミルクの方が栄養成分の吸収率は高くなる」とコメントしている。

料理への応用については、牛乳代替として使用される。クセがなく、コーヒーや紅茶との相性がよく、繊細な出汁などを使用する和食メニューにも好適となっている。

21年9月、このような価値がTV番組に取り上げられたことで市場は大きく拡大。22年も21年に引き上げられた高い水準を維持。同協会調べで22年市場の前年比は、販売量で8%増、販売金額5%増を記録した。

「アーモンド効果」商品群

昨年浮上した課題としては、あらゆる物の値段が上がっている中で、比較的高い価格帯にある。これにより昨年は伸びが鈍化。この“価格の壁”突破がさらなる成長の鍵となる。

この課題に対して、江崎グリコは「アーモンド効果」で“推奨”をテーマに掲げ、家族・知人らに「アーモンド効果」を薦めることを促す“おすすめ大作戦”を実施している。

対象商品は200ml全般。目的はライトユーザーの獲得にある。

「アーモンドミルクへの流入経路を調べてみると、親や友達といった自分が信頼できる第三者から勧められて試される方のボリュームが増えていることが判明した。その後のリピートにもつながっていることもみえてきた」と江崎グリコ健康事業マーケティング部の増田秀人氏は着目の理由を説明する。

おすすめ大作戦は春先から展開。

4月の新生活、母の日という贈答機会に向けてツイッターのオープンキャンペーンを実施している。「当選すると、当事者に加えて、当事者の信頼する人や大切な人に商品が贈られる企画で、母の日以降も父の日も実施していく」。

推奨が起こりうる場所として、スポーツジムやエステ施設でのサンプリングも実施している。

「健康や美容への関心の高いターゲットが集まるコミュニティの中 で、会話をしながら『アーモンド効果』を体験していただくことで広がりつつあることから、それをさらに加速させたい 」と述べる。

松島花さんと滝藤賢一さんを起用した新TVCM「効果をカラダに。妻のおすすめ」編の内容も“推奨”をメインに据える。

昨年に続く新たな取り組みとして、新規ユーザーを含め消費者との接点拡大を目的に6月から8月にかけて熱中症対策飲料としての訴求を本格展開していく。

「アーモンド・ブリーズ」商品群

ポッカサッポロフード&ビバレッジは、「アーモンド・ブリーズ」で、ビタミンEが豊富に含まれているというアーモンドミルクそのものの特徴に加えて、200mlあたり牛乳コップ1杯分のカルシウムが含まれている点を訴求強化していく。

ポッカサッポロの武田真一郎マーケティング本部ブランドマネジメント部副部長は「200m1でコップ1杯の牛乳と同量のカルシウムが摂れるのが『アーモンド・ブリーズ』の特徴。カルシウムは“摂りたい栄養素No.1”といわれていることから、改めて我々の商品を訴求していく」と語る。

この考えのもと、「アーモンド・ブリーズ」主要商品のパッケージを刷新して3月27日に発売開始。従来から記されている“牛乳コップ1杯分のカルシウム”の文言をアテンション風に仕立てて強調した。

主要商品の中で伸び盛りの「砂糖不使用」1Lには「日経POSセレクションGOLD2022」のアテンションを加え、36万品の商品データの中で2022年に売上伸び率上位60商品に選ばれたことも訴求している。

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