糖尿病患者襲う失明リスク「糖尿病網膜症」 患者の約2人に1人が眼科受診せず

糖尿病の「三大合併症」といわれる発症頻度の高い糖尿病性網膜症。日本人の失明原因の上位にもあがる深刻な眼科疾患だが、国立国際医療研究センター研究所等が行った調査によると、糖尿病の治療を受けている患者約441万人のうち、眼科を受診したことがある人は47%、眼底検査の実施割合は46%と半数以下にとどまることがわかった。ただ、眼科を受診した患者では9割以上が眼底検査を受けており、内科と眼科の適切な連携が糖尿病網膜症治療のカギとなることがわかった。

(Getty Images)※画像はイメージです

内科と眼科の連携がカギ

国立国際医療研究センター研究所や東京大学等による共同研究チームが、厚生労働省から提供された全国の保険診療情報が組み込まれた大規模データベース(匿名レセプト情報・匿名特定検診等情報データベース)から、糖尿病の治療を受けている約441万人の患者を対象に2017年度の眼科受診と眼底検査の実施割合を算出。糖尿病網膜症のスクリーニングを行う過程で、具体的にどこに課題があるのかを分析した。

(引用:国立国際医療研究センターHPより)

その結果、眼科を受診した患者は約47%と低く、眼底検査の実施割合も46.0%と半数に満たなかった。ただ、眼科を受診した患者に限定した場合、約97%に対して糖尿病網膜症のスクリーニングとして眼底検査が実施されていたことがわかった。都道府県別の調査でも眼科の受診割合は約39~51%、そのうち眼底検査の実施割合は92%~99%と、ほぼ同様の傾向を認めた。

眼底検査を受けている患者の特徴としては、女性・高齢者・インスリンを使用しているケースで多い他、日本糖尿病学会の認定教育施設や病床数が多い医療機関で治療を受けている患者で眼底検査の実施割合が高い傾向を示した。

調査結果について研究チームは、「眼科受診をした患者での眼底実施割合は高値であるものの、そもそも眼科の受診割合が低いことが課題であることがわかった。内科の医師から眼科受診の推奨が適切にできていない可能性があるほか、推奨をされても患者が受診していない可能性もある」との見方を提示。糖尿病網膜症スクリーニングの実施割合の向上策として、眼科受診の必要性についてのさらなる周知や、糖尿病薬を処方している内科と眼科との連携強化の重要性を強調した。

国が対策強化も

糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜が障害を受け、視力が低下する病気。糖尿病腎症、糖尿病神経症と並んで、糖尿病の三大合併症に位置付けられる。治療薬や網膜症治療の進歩によって失明は以前よりは減少しているものの、失明原因としては緑内障等に次いで第3位と依然として高い水準にある。

定期検診と早期治療で病状の進行を抑えることが可能で、日本糖尿病学会が示す「糖尿病治療ガイド」では年に1度眼底検査を受けるよう推奨しているが、2015年度に行った調査では年間の眼底検査実施割合は47%と半数に及ばず、検査受診率の低さが糖尿病診療の課題とされてきた。

国内の糖尿病患者は予備軍を合わせると2000万人との推計もあり、こうした事態を受け、今年3月末には厚労省が糖尿病をめぐる医療体制を評価する基準に「眼底検査の実施割合」を組み込み、眼科受診へと方向付ける方針を打ち出すなど対策を強化している。

© 株式会社産経デジタル