<金口木舌>本末転倒の報道に思う

 目的と手段、大事なこととどうでもいいことを取り違えることを「本末転倒」と言う。防衛省の「南西シフト」を巡る動きと昨今の報道をどう呼べば良いか

▼中国を敵視し、戦争準備と思わせるような動きが目立つ。報道もそれを支えているかのよう。危機をつくっているのは誰か。この道はいつか来た道である

▼明治以降、帝国日本は戦争に明け暮れた。1914年に日本軍は沖縄戦と酷似した大規模演習を実施した。本紙は勇ましく伝え、県民は演習見物に興じた

▼40年当時の新聞をめくると「皇軍」「武運長久」の見出しが躍る。その中に「皇軍の懐にスクスク伸ぶ支那民衆は幸福」と題する記事を見つけた。「強者日本」のおごりがうかがえる。「満州に沖縄村建設」の記事。「大東亜の春にふさわしい」と伝え、侵略に加担した

▼5年後の沖縄戦で戦争報道も破綻した。県民を死に追いやった新聞の責任は大きい。だからこそ他国を敵視する軍備増強にはあらがいたい。戦死者を英雄視する風潮にも。いつか来た道を歩むわけにはいかない。

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