フリマアプリ芋苗販売問題 農相、病害の拡大懸念 メルカリはガイド改定

フリマアプリで登録品種の自家増殖とみられるサツマイモの苗が多数取引されていることを伝える本紙「農家の特報班」の記事。電子版から

フリーマーケットアプリ上で農家が増殖したとみられる登録品種のサツマイモ苗が多数売られている問題を巡り、野村哲郎農相は20日の閣議後記者会見で、種苗法に基づく制度や罰則の周知が必要との考えを示した。こうした苗を通じたサツマイモ基腐病などの拡大に懸念も表明した。

種苗法で、登録品種を増殖した苗を販売するには育成者の許諾が必要になる。野村農相は「(無断増殖や販売は)損害賠償や刑事罰の対象になることを、できるだけ広く言わなければならない」と強調。交流サイト(SNS)を活用したり、フリマアプリの運営会社などにも協力を求めたりして、周知していくとした。

南九州で多発しているサツマイモ基腐病は感染苗を通じても広がるが、フリマアプリで売られている苗は生産履歴が不明確なものが多い。サツマイモの苗は増殖が簡単なことを踏まえ、野村農相は「(同病が他地域でも広がれば)取り返しのつかないことになる」との見解も示した。

登録品種の苗を増やして無断で販売・譲渡すると、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金に問われる可能性がある。

本紙

「農家の特報班」

の取材で、大手フリマアプリのメルカリには、登録品種の無断増殖とみられるサツマイモ苗や、登録品種であることの表示がないなど、種苗法違反とみられる出品物が多数見つかっていた。

育成者権侵害の禁止明示 メルカリが対応策

フリーマーケットアプリ大手のメルカリは20日、農産物の登録品種の出品に関するガイドラインを改定したと発表した。アプリへの出品を禁止する物品として、登録品種などの「育成者権侵害」を新たに明示。登録品種を出品する際に、種苗法で義務付けられている登録品種であることなどの表示も求めた。

改定したのは、利用者のルールを定めたメルカリガイド。知的財産権を侵害するとして出品を禁止されている物に「育成者権侵害」の項目を新設した。メルカリによると、出品禁止物と判断した場合、取引のキャンセルや商品の削除、利用制限などの措置を取る場合があるという。

種苗法では、登録品種の苗を販売する際には、品種名や登録品種であることなどを表示する義務がある。同法では、育成者が品種登録をする際に、海外への持ち出し禁止や栽培地域の制限といった条件を付けられる。ガイドラインでは、出品の際にこうした情報も掲載するよう求めた。

メルカリは同日、登録品種であることの表示義務について、利用者向けの案内文も発出した。出品時に表示義務を守らない場合は、種苗法違反になると説明した。

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