改めて感じさせられた遠藤航の存在感、デュエルの強さだけではない冷静さと判断力を持つ偉大なキャプテンへの第一歩

[写真:Getty Images]

第2次政権で2度目の活動となった6月シリーズは、エルサルバドル代表、ペルー代表を相手に2連勝。2試合で10ゴールという結果を残して終えた。

「南米の強豪にこうやって勝てるということを自信に繋げて、次からの活動でもレベルアップを目指していきたいと思います」

試合後の記者会見で森保一監督はこう語ったが、まさに力を発揮できた2試合だったと言えるだろう。

15日に行われたエルサルバドル戦は、キックオフからアグレッシブに入ると、1分で先制。2分で相手が退場し、ほとんどの時間を数的有利な状態で戦った。

ただ、10人になれば相手も戦い方を変えてくる。決して簡単な試合とはならなかったが、選手たちは強度を落とさず、ゴールに向かい、結果として6ゴールを記録した。

そして迎えたペルー戦。エルサルバドル以上に実力を持つ相手との試合だったが、伊藤洋輝(シュツットガルト)のミドルシュートで幸先良く先制すると、見事なつなぎから三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)が追加点。後半に入り、伊東純也(スタッド・ランス)、前田大然(セルティック)とゴールを重ね、4-1で勝利を収めた。

2試合10ゴール、10人の得点者。攻撃に常に課題を抱える日本代表としては、この上ない収穫だったと言える。特に、所属クラブで好調を維持してシーズンを終えた選手たちが多いだけに、そのプレーをしっかりと代表チームでも発揮できたことは良い傾向だ。まだまだ反省点はあるものの、それでも収穫が大きかったと言えるだろう。

ペルー戦に目を向ければ、古橋亨梧(セルティック)、伊東、三笘、鎌田大地(フランクフルト)、旗手怜央(セルティック)と攻撃のユニットはあまり見ない組み合わせとなった。

三笘のみが第2次政権で4試合連続の先発起用。それ以外の選手は大きく変わっている。この試合では、右サイドに入った伊東との両サイドは突破できる脅威を相手に与え続けた。

鎌田と旗手の両インサイドは良いポジションを取り、間でパスを受ける展開に。また、スペースを空ける動きを見せるなど、互いに良さを見せることとなった。鎌田に関しては、下がってボールを受けること、前に出てゴールに迫ることなど、攻守にわたって存在感を見せることとなった。

◆改めて存在の大きさを感じさせたキャプテン

その中でも改めて今の日本代表に欠かせない存在であることを示したのがアンカーで起用された遠藤航(シュツットガルト)だ。

今回の活動で、新体制の日本代表のキャプテンに正式就任。エルサルバドル戦は出番がなかったため、この試合がキャプテンとしてのデビュー戦であり、日本代表通算50試合目の出場となった。

エルサルバドル戦では相手の問題もあったが、アンカーの守田が気を利かせたプレーを見せ続け低田が、この日の遠藤はそれ以上のパフォーマンスを見せていた。

何よりもそこにあるのは安定感と安心感。森保監督がキャプテンを任せることを決断しただけの理由はある。その存在感は、いなかった1試合ではなく、出場した1試合で見せつけた。

「南米のチームは一対一や球際が強い。そこで上回るのが自分の仕事。それは真ん中でやっている以上、見せなければならない」

試合後に遠藤は自身の役割を語った。FIFAランキングでも1つしか違わない相手。実力のある相手であり、プレスの強度や守備のタイトさはエルサルバドルとは比にならなかったが、遠藤は落ち着いて役割を果たした。

ブンデスリーガでデュエルキングに輝いた実力は伊達ではない。ただデュエルに強いのではなく、チームが求めるタイミングで、しっかりと相手を封じる力を持っていることが大きい。

なかなか上手くいかないペルーの攻撃を受けて、百戦錬磨のパオロ・ゲレーロが降りて来れば、しっかりと潰しに行く。相手がカウンターを仕掛けようとすれば、その手前でボールを奪う。両サイドが高い位置を取り、スペースが空けば埋めに行って止める。また、自身が奪い切るだけでなく、チーム全体を促すプレーも見せる。守備においては全てをコントロール。結果、遠藤が下がった直後に日本は何でもないプレーで失点してしまった。遠藤がいたらという仮定の話はしたくないが、谷口彰悟(アル・ラーヤン)がクリアしたボールは、しっかりと回収したかシュートブロックに入っていたのではないだろうか。それだけ安定感があった。

そして、遠藤が素晴らしいだけでなく、周りが生きてくるのも魅力だ。遠藤がアンカーにいることで、バランスを取る鎌田と旗手も自由度が増す。サイドバックの菅原由勢(AZ)も臆することなく高い位置を取れる。前線の5枚が特徴を出す上で、遠藤がいるという安心感が思い切りの良さを引き出せると言える。

「前から行かなくていい時は無理やり相手に持たせる形を取った。前の選手は横パスが入った時にスプリントをかけて行きたくなる所を、我慢してもらって6番を見てもらった」

前線からの守備は追い回してしまいがちだが、遠藤はしっかりとそこも制御。チームとしての戦い方をピッチ上で判断しなければならない以上、ゲームを読み、最善の策を見つけられる選手は必要だ。その点では、遠藤が最も優れた存在と言えるだろう。クラブで厳しい残留争いを2年連続で乗り越えたことも、難しい状況でキャプテンとしてチームマネジメントしたことも、日本代表にとって大きな経験になっているようだ。《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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