源氏を拒否し続けた女性とは?~巻名:朝顔~【図解 源氏物語】

恨みを抱えた藤壺が夢枕に

桐壺院の弟である式部卿宮(しきぶきょうのみや)が亡くなり、その娘の朝顔は、喪に服すために齋院(さいいん)を退きました。昔から朝顔に求愛していた源氏は、弔問の文を何度も送りますが、朝顔は応じません。9月、朝顔が式部卿宮の旧邸である桃園の宮に移ると、源氏は、そこに住む源氏と朝顔の叔母、女五の宮の見舞いを口実に訪ねてきます。女五の宮は口数の多いタイプで、源氏の美しさを面と向かって褒めちぎり、帝が源氏に似ていると噂されているが、源氏のほうが上のはずと、饒舌に語ります。やがて、源氏が前斎院に頻繁に文を送り、女五の宮も喜んでいるという噂が立ち、紫の上のは心配します。もう若くないと自覚する朝顔は、つれなさを演じ続けるばかりで、結局、源氏は相手にされないまま、紫の上のもとに帰りました。

雪が降り積もった庭で童女を遊ばせ、そのかわいい様子を見ながら、源氏は紫の上に、昔、藤壺の御前で雪山をつくって興じたときの思い出を語ります。次いで、藤壺、朝顔、朧月夜、明石の君と、関わった女性たちについての評を語ると、紫の上は内心の葛藤を抑えて自然に応じます。その顔立ちは藤壺に似ていて、源氏も浮気心を捨てるのでした。その夜、源氏の夢に藤壺が現れ、秘密を漏らしたことを強く恨んで「恥ずかしく、苦しくつらい」と訴えました。源氏は涙を流し、成仏していない藤壺を思って、ひそかに菩提を弔いました。

斎院・・・上賀茂神社・下鴨神社に奉仕する皇女。桐壺院の崩御に伴って退いた前斎院のあとに朝顔が立ったことが賢木の巻に記されている。

清少納言『枕草子』を彷彿とさせる雪遊びの場面

紫式部と対比して語られることの多い清少納言が書いたのが、著名な『枕草子』。『枕草子』は『源氏物語』より数年前に書かれており、ここでは、『枕草子』が現存しない箇所で批判したという「冬の夜の月」を称賛するなど、紫式部が『枕草子』を意識したとも思われるエピソードが重なる。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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