損をしてでも保ってしまう「社会的アイデンティティ」とはどのようなもの?【社会心理学】

優位性を確認することで自尊心を高める

私たちは、日常生活する中で、様々な集団に属しています。いずれの場合も、集団の中での立ち位置や、所属するまでの経緯などもあり、その関わり方は複雑です。

ヨーロッパの心理学者であるヘンリ・タジフェルたちは、それらのしがらみのない集団(最小条件集団)で、内集団びいきの現象が起きるかどうかの検証を行いました。

まず、実験参加者に2枚の絵を見せ、「どちらが好きか」という基準だけでふたつのグループにわけます。参加者たちは匿名で、同じグループ内でも顔を合わせることはありません。そのため、「同じ集団である」ということ以外の情報は、一切入ってこないことになります。

そのような状況で、自分と同じ集団の人1名と、違う集団の人1名にお金(ポイント)を分配する作業を行ってもらいました。その結果、参加者たちは一貫して、内集団のメンバーのほうに多く配分したのです。しかも、内集団の利益が最大になるようにではなく、内集団の取り分が少なくなっても、外集団の利益がより少なくなるほうを選んでいました。

この結果には、人がある集団の一員として自己定義をする「社会的アイデンティティ」が関連しています。単に、内集団の取り分が多いということよりも、外集団より多く配分することにより、内集団の優位性が確認できることが重要なのです。こうすることで私たちは好ましい社会的アイデンティティを維持・高揚して自尊心を高めていると言えるでしょう。

自分と同じ集団の人をひいきする「内集団びいき」、そして、その背景にある、外集団への差別はこうして発生するのです。

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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?

日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。

この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。

明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう

この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした

ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。

会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。

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【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也

「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!

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