4月15日以降、スーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で戦闘が続くスーダン。いっときの停戦合意もつかの間、首都ハルツームでは激しい戦闘が再開された。 ハルツームから南東約200キロに位置する、ジャジーラ州の州都ワドメダニ。すでに約5000人の人びとが避難生活を送るこの町の3カ所の避難民キャンプでは、ハルツームからの避難民が急増している。ここで活動する国境なき医師団(MSF)は、そのキャンプの一つで避難民の数が1週間で300人から2800人にまで増加していることを確認。大勢の人が短期間に押し寄せる状況の中、一刻も早くこの紛争で避難した全ての人びとに、医療や生活インフラを届ける必要がある。
MSFは移動診療を運営
「首都からワドメダニに着いた避難民の多くは、ハルツームでの戦闘で持ち物や生計手段だけでなく、家族も失っています」とMSFの医療コーディネーター、アニャ・ウォルツは話す。
5月に入ってから、MSFのチームはスーダン保健省職員の支援を受け、ワドメダニで避難民が集まるいくつかの場所で移動診療を行い、これまでに1600人以上の患者を診てきた。患者の多くは呼吸器感染症にかかっており、一般的には劣悪な生活環境や適切な避難所がないことに起因している。
MSFはマラリアや糖尿病、高血圧、ぜんそくなどの慢性疾患、アレルギーや疥癬(かいせん)による皮膚病変の治療や予防接種も実施。また、助産師が妊娠中の女性の診療に当たっており、心のケアも受けられる。ここ数週間にわたって、ワドメダニへの活動維持に必要な物資の運搬も行った。
雨期に備え、衛生状態の改善を
「検査室の設備は万全とまではいえませんが、使えるものを使い活動を続けています。薬の供給も安定していますし、マラリア、血糖値、血圧、妊娠などの簡易検査キットもあります。保健省と連携し、急患は病院に搬送し、MSFの医療スタッフを患者に同行させる形で経過観察も行っています」とMSFの医師、アーメド・オメル・アルジャックは述べた。
雨期を控えた避難民キャンプ内の水・衛生環境も、懸念の一つだ。すでにマラリアの患者数は増え始めており、デング熱の感染拡大も心配されている。設備が整わないキャンプでは、雨期が到来すると蚊の繁殖が起こることが多いからだ。
「ワドメダニにいるチームは、このままでは深刻な事態になりかねない、コレラなど水系感染症の集団発生の予防にも取り組んでいます。MSFはキャンプ内の衛生状態を改善し、安全な飲み水を安定供給するために懸命に活動しているところです」とウォルツは話した。
MSFは現在、ハルツームから新たに人が押し寄せる事態に対応するために、どのように活動を拡大すればよいか調査を行いながら、活動を続けている。
MSFのスーダンでの活動
ハルツームやダルフールを含むスーダンの11州で活動。ハルツームと北ダルフールでの戦闘による負傷者治療、ゲダレフ州とジャジーラ州の難民・避難民への医療の提供と水・衛生活動、青ナイル州では栄養失調の治療や基礎的な医療を提供するほか、医療施設へ医療物資などの寄贈を行っている。