10代にしてロックスターたる風格、WENDYが目指す地平線

10代とは思えない新旧のロック・クラシックスを踏まえた音楽性とパフォーマンスによって注目を高めているWENDY。英国やロシアをルーツにもつメンバーが在籍してることからナチュラルに英語詞で歌い、結成当初から世界進出を視野に入れていた彼らが放つゴリゴリのサウンドの魅力は、マネスキンなどのロック・リバイバル的な流れとも合致するものと言えるだろう。

ヴィンテージなロックの香りと風格に満ちた4人組バンド・WENDY

メンバーは、Skye(Vo、G)、Paul(G)、Johnny(B)、Sena(Dr)の4人で、全員が東京・世田谷区在住。18~20歳ながらすでにロックスターたる風格を漂わせる彼らに、結成から現在にいたる流れや、同世代では珍しい音楽的なルーツについて語ってもらった。

取材・文/吉本秀純 写真/Ayami

◆「そろそろ更生しようとバンドを組んだ」(Skye)

──結成は2020年10月とのことですが、どんな感じで出会ったんですか?

Skye「そもそもSenaと俺は中学生の頃から仲が良くて、JohnnyとPaulは高校が一緒で同じ軽音部に一瞬だけ入っていたんです。ただ、そのときは何もしなかったけど(笑)」

Sena「合う人がいなかったんですよね」

Skye「それで、Senaと俺は学校を辞めて、外でずっと友だちと遊んでいて。JohnnyとPaulも学校にはほとんど行ってない感じで。で、俺とSenaは歳が1つ上なんですけど、地元で1歳下のグループが暴れていて、そこと喧嘩になりそうって話が流れてきて。Johnnyは向こうのグループだったんですけど、喧嘩になる前に話をしようと1人で来たんですよ。そのときに初めて会ったんですけど、KISSのTシャツを着ていたので『え、好きなの?』と」

Johnny「そこでちょっとロックの話をして、お互いに仲良くなりましたね(笑)」

左から、Paul(G)、Sena(Dr)、Johnny(B)、Skye(Vo&G)の4人

──1973年代結成のハードロックバンド・KISSのTシャツのおかげで、Z世代のグループの衝突が回避されたと(笑)。

Skye「そうです(笑)。その後はどっちのグループも仲良くなって一緒に遊んでいたんですけど、そろそろ更生しようと、この4人でバンドを組むことにしたんです」

Paul「やんちゃなことをしている場合じゃなくて、もっと別の方向に力をいれようと」

Skye「そう、そんな感じです(笑)」

──更生のために始めたというのは、ロック・バンドとして素敵なエピソードです(笑)。そんな4人が鳴らすサウンドですが、70~80年代の洋楽ロックからの影響をストレートに感じさせます。今の10代のバンドとしてはかなり渋い路線ですよね。

Skye「そうですね。50sからモダンまで全部できるので、振れ幅は広いですね。ルーツは洋楽のロックなのでそこはキープしながらも、現代の人たちが聴きやすいサウンドにしています」

WENDYの2nd Digital Single『Devil’s Kiss』(2022年7月26日リリース)

──メンバー全員2000年代の生まれですが、同年代でヴィンテージなロックをちゃんと踏まえている人というのは、あまり周囲にはいなかったんじゃないですか?

Skye「いなかったですね。だからこの4人が集まったこと自体が奇跡だなって。お互いにいろんなものを聴いていたので、知らなかったことはJohnnyとPaulから学んだり」

Sena「僕は昔のロックに接していなかったので、この3人から教えてもらって好きになりましたね」

◆「ルーツを辿っているからこその説得力」(Paul)

──ローリング・ストーンズやデフ・レパードなど、WENDYの楽曲を聴いているとさまざまなバンドを連想させる要素が聴き取れますが、メンバー各々が一番影響を受けたのは誰ですか?

Paul「俺はレッド・ツェッペリンですね。ほかにも好きなバンドはいろいろありますけど、心のなかではやっぱりジミー・ペイジ(ツェッペリンのギタリストでリーダー、世界三大大ロックギタリストと称されている)が一番です」

Johnny「僕はデヴィッド・ボウイ(グラムロックのパイオニア)か、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(ロックの概念を覆したバンド)か。一番と訊かれたら、どちらかですね」

Skye「俺は新旧聴いているので、ひとつに絞るのは難しいけど、モトリー・クルーやガンズ・アンド・ローゼズあたりのLAメタルも好きだし、プリンスとかマイケル・ジャクソンもよく聴いてました。ジョン・メイヤー(現代の三大ギタリスト)とか、最近だとイギリスのThe 1975も好きですね」

Sena「僕もSkyeと同じでいろんなものを聴いていました。最初はモトリー・クルーを聴いて、そこからいろいろな音楽を聴くようになって、最近はレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、1983年結成)とかも聴いたりしていますね」

インタビューに応えるWENDYの4人

──英語詞でルーツ・ロックも踏まえた音を、という方向性は結成当初から固まっていたんですか?

Paul「気持ちの面では、俺らは全員しっかり音楽をやって世界へ飛び出す、というのは結成当初からありましたね」

──日本のライブハウス・シーンだけじゃなくて、もっとスケールの大きなところを見据えている感じは音からも伝わってきます。

Skye「俺らの世代で世界のメインストリームで活躍している日本のバンドってなかなかいないし、やるなら世界中で聴いてもらいたい。それを目指して頑張ってます。誰よりも高いところを目指しているし、それこそThe 1975やエド・シーランといった海外のアーティストとも戦えるくらいにならなきゃなと思っているので。ま、いいモチベーションというか、気持ちは強く持っています」

WENDYの5th Digital Single『Runaway』(2023年6月21日リリース)

──実際、2022年には『サマーソニック』に出演して海外勢と同じステージに立っていますし、グルーヴや音の鳴りには、多くの日本の新人ロック・バンドとは違うものを明らかに感じます。

Skye「もちろん、日本なりのロックというのもあるんですけど、やっぱりルーツのロックを勉強している俺からしたら、ファッションも大事だし、それに対しての気持ちも大切だし。ま、それぞれのロックがあると思うんですけど、(WENDYの4人は)そこが共通しているからこういう音になるんです」

Paul「やっぱり、ルーツを辿っているからこその説得力というのもあるはずで。そこらへんは俺たちは大事にしていますね」

Skye「ただ、昔とまったく同じことをやっても仕方がないので、昔のロックをリスペクトしつつも自分たちのテイストを入れて、俺らのロックはこれだぞというのを伝えていきたいですね」

◆「結局は自分たちの好きなことをやる」(Skye)

──そして、ライブ活動と並行して、『Rock n Roll Is Back』(2022年5月)からシングル曲を配信でリリース、2023年4月26日には4曲目となる配信シングル『Pretty in pink』が発表されました。今回はザ・ブラック・キーズやジョン・バティステの作品を手がけてきたマーク・ウィットモアをプロデューサーに迎えて、バンドとしてさらなる一歩を踏み出した楽曲に仕上がったのではないかと思うのですが。

Skye「そうですね。今までのレコーディングとは全然違ったし、いい経験になりましたね。スタジオに入ったときから、仕事というよりラフな雰囲気を演出してくれて、『キミたちの気分が上がるまでやらなくていいよ』と待ってくれたり、『じゃあ、この曲に入るムードにしようか』って部屋を暗くしてくれたり。マークは『ライブがちゃんとできるバンドがいい』と話していて、俺らはライブは一丁前にやってきたので、レコーディングもメンバー4人が同じ部屋で一発録りみたいな感じでやりました」

WENDYの配信シングル『Pretty in pink』(2023年4月26日リリース)

──楽器のセッティングや音の録り方の面でも勉強になることが多かったと、みなさんがコメントで書かれていたのも印象的でした。

Paul「アンプの位置もそうでしたし、普通は小部屋にアンプを入れてドアを閉めて録音をするんですけど、マークの場合はちょっと開けた状態であえてヘッドフォンもしないで、ほとんど生音みたいな感じで合わせることもあって。そういう録り方は今までなかったので斬新で、驚きましたね」

──『Pretty in pink』を含めて4つのシングル曲をリリースしてきたことで、夏あたりには完成するだろう初のアルバムに向けて、バンドの全貌が徐々に明らかになってきた感があります。

Skye「どの曲も違うし、WENDYがどういうバンドなのか、ちょっとずつ見えてきていればいいですね。まだコレっていうのがないのも良くて、もちろん俺たちの中心にあるのはロックだけど、いろんな形のロックがあるから、最終的にはWENDYというものがひとつのジャンルのような感じになればいいなと思っています」

──では、初のアルバム・リリースを控えて、今後にバンドとしてもっと打ち出していきたい部分やより深く表現していきたいものなどがあれば聞かせてください。

Skye「この前、バンドのショーケース・ライブをやって、そのときもわりと幅広い年齢層の人が観に来てくれたんですけど、同世代の人たちをガッシリと掴みたいと思っています。と言っても、流行りを狙うわけじゃなく、今のトレンドを研究しつつも、結局は自分たちの好きなことをやるという(笑)」

左から、Johnny(B)、Skye(Vo&G)、Paul(G)、Sena(Dr)の4人

──そこはやっぱりブレないですね(笑)。

Skye「でも、パフォーマンスや技術はもちろん、曲作りもレベルアップはしていきたいんで。世界に行くためにできることは頑張ります」

Sena「僕はフィルのパターンもまだまだなんで、これからもっとドラムを極めて、曲作りもやっていきたいです」

Paul「ギタリストとして言うと、自分は8っぽい16ビートの曲を書きたいなと思っています。(個人的には)あまり最近の音楽を聴かなかったりするので、そういう方向でも面白いことができればいいなと」

Johnny「どんな年齢の人でも、どこの国の人でも、誰が聴いてもいいと思える楽曲をこれからも作って、頑張っていきたいです」

2023年4月末に4曲目となる配信シングル『Pretty in pink』を発表。6月21日には、5thデジタルシングル『Runaway』をリリース、この夏には初のアルバムを控えている。

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