小田原城で人気のサル、譲渡へ 動物園は70年の歴史に幕 国から「史跡にふさわしくない」

訪日客など観光客に人気のサル舎=小田原城址公園(2023年6月21日撮影)

 小田原城址公園(小田原市城内)で長年にわたり観光客に愛されたニホンザル7匹が今年12月に茨城県内の動物園に引き取られ、その後サル舎が撤去される方針であることが21日、分かった。

 城内には小田原動物園があったが「史跡にふさわしくない」との理由から実質的な閉園状態に向かい、引き取り手が見つからないサル舎だけが10年以上残されていた。

 2009年に死んだゾウのウメ子など、300匹以上が飼育され人気を博した「お城の動物園」は、70年余りの歴史に幕を下ろすことになった。

 天守閣を望む本丸広場の一角に立つサル舎。7匹の群れは引っ越しが決まったことも知らず、好物のビスケットやサツマイモを頬張る姿に親子連れや外国人観光客らが目を細めていた。

 小田原城総合管理事務所によると、群れは雄3匹と雌4匹からなり、推定30歳の雄がボスとして君臨。平均寿命20~25歳とされる中でいずれも20歳を超す高齢グループという。20年近く飼育を担当した諸星典央さん(54)は「飼育員になったばかりの頃は警戒されていたが、信頼関係を築いてきた。いなくなるのはさみしいけど、新しい施設は安心できる場所だから」とサルたちを見つめた。

 動物園は1950年、市制10周年を記念した「こども文化博覧会」の会場を残す形で開園。タイからやって来たウメ子やサルは開園時から市民に愛され、最盛期の88年にはツキノワグマやワニ、インドクジャクなど70種332匹が天守閣周辺をにぎわせた。

 明治時代に廃城となった小田原城址は本丸周辺が59年に国指定史跡となり、天守閣も60年に再建。当時は城内に遊園地や野球場、市役所、学校まであったが、70年に文化庁から「城に関係ない施設は撤去すべき」と求められたため、市は数十年かけて市役所や学校などの移転を進めてきた。

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