来る認知症時代に向け「認知法基本法」成立…これで認知症との共生社会は可能なのか?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。6月15日(木)放送の「FLAG NEWS」のコーナーでは、先日成立した“認知法基本法”について取り上げました。

◆認知症の方との共生を目指す「認知症基本法」

認知症の人と共生する社会を目指し、必要な政策を進めるための「認知症基本法」が、参議院本会議で全会一致で可決・成立しました。

その基本理念は、認知症の人が自らの意思で日常生活・社会生活を営むことができるよう適切な保健医療サービスが切れ目なく提供され、家族などにも適切な支援を行うなどとしています。

国には認知症施策の基本計画を作るよう義務づけ、交通機関・小売業者などには事業に支障のない範囲で必要な配慮をするよう求め、国民には認知症に関する正しい知識を持つよう求めています。

このニュースに関心を寄せていたのは、食文化研究家の長内あや愛さん。というのも、身近に認知症の方がいない長内さんにとっては、この法律が果たしてどのようなものなのかイメージが湧かず「介護の現場ではどう捉えられているのか?」と話します。

交通機関・小売業者への"必要な配慮”とは具体的にどのようなことなのかなども含め、「5人に1人が認知症になるこれからの時代において、マイナカードの紐づけや有効性などについても、もう一度改めて説明してほしい」と切望します。

一方、認知症に関して取材経験のある関西大学特任教授の深澤真紀さんは「日本はもともと(認知症のことを)"痴呆症”と言い、そうなったら終わりと言われ、人権がなかった」と認知症に対するこれまでの日本人の捉え方について言及。

そして、過去に取材したというオランダの認知症の村について語り始めます。そこには150人程度の認知症の方と250人のスタッフがいたそうで、基本的に全てのことを認知症の方に任せており、そうした様子を見た深澤さんがいいなと思ったのは「個人個人のパーソナルヒストリーをきっちりと聞くところ」。

日本では認知症の方は一括りにされてしまいがちですが、その村では個人個人の尊厳が重視され、認知症の方も個人的なことを尋ねられたり、お願いされることで「みんなピシッとなる」と深澤さん。こうした関係性はボランティアの方にとっても好影響だそうで、深澤さんは「これが今、ヨーロッパではすごく広がっている」と解説します。

◆認知症基本法の成立で共存社会の構築は可能なのか

こうした話を聞き、キャスターの堀潤は今春改正された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に言及。そこには「精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備」を強化していくとあり、その内容は「家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合にも、市町村長の同意により医療保護入院を行うことを可能とする」とされています。

堀は「要は、(精神障害者)本人が同意に応じられない場合、これまでは家族の同意を取りつけていたが、今後は市町村長が認めれば本人、家族の同意なくして保護入院を可能にする」と約した上で「(深澤さんが取材したオランダの村のような)個人を尊重することとは全く真逆の法改正が行われている」と危惧します。

対して、経済アナリストの池田健三郎さんは「これは人手不足の問題が大きいと思う」とその原因を指摘。「本質的なケアができるようにするためにどれだけの人間をどれだけのコストで用意し、それをいかに社会的に負担していくか。これが見えないと、質を担保することが難しい」と話します。

そうした状況下では結局妥協せねばならなくなり、効率化が重要視され、個別の判断が難しくなるため代表として自治体の長に任せることになってしまうと分析。総じて、池田さんは「合理性を優先した結果のやむを得ざる措置だと思うが、こうした最大公約数的な政策がどんどん進んでいく。これが今の日本の少子化を踏まえた負担者が少ない社会の現実」と案じていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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