引き裂かれた夕霧と雲居雁~巻名:少女(おとめ)~【図解 源氏物語】

大学に入り発奮して勉強

葵の上亡きあと、祖母の大宮に育てられていた夕霧は元服しました。大臣の息子なので、四位にもなれましたが、源氏は大学に入学させ、六位という下級の官位からはじめさせました。不満を抱く大宮と夕霧に、源氏は「自分は宮中育ちで勉学の機会がなかった。夕霧にはその機会をつくるためにこうした」と話します。発奮した夕霧は勉学に励み、擬文章生(ぎもんじょうしょう)となりました。

そのころ、源氏の養女である斎宮女御が、絵合に勝利した流れで、弘徽殿女御を超えて中宮(秋好中宮)になりました。源氏は太政大臣に、大納言兼右大将(だいなごんけんうだいしょう 元・頭中将)は内大臣に昇進します。内大臣は、外腹の娘である雲居雁(くもいのかり)の東宮入内を願いますが、雲居雁は大宮のもとで一緒に育った夕霧と相思相愛になっていました。それを知った内大臣は激怒し、雲居雁を自邸に連れ戻そうとします。引き裂かれながらも、夕霧と雲居雁は大宮の手助けで短い逢瀬を果たします。

その一方、夕霧は、新嘗祭の五節の舞姫となった惟光の娘を見て心惹かれ、文を送りました。源氏は夕霧の母親代わりを花散里に依頼します。容姿は劣るものの、気立ての良い花散里に、夕霧は心を許します。夕霧は国家の役人である官吏の登用試験に合格し、秋には侍従に昇進しました。源氏は、かねての計画通り、六条京極付近に広大な六条院を完成させました。

大学・・・通常、上流貴族の子弟は大学で学ぶ必要もなく相応の官職に就けた。
擬文章生・・・大学寮で詩文や歴史を学び、寮試に及第した者。
新嘗祭・・・天皇が新しく採れた作物を神に供える儀式。このとき、舞いに奉仕する未婚の女性を五節の舞姫という。
侍従・・・中務省に属し、天皇に仕えた職。官位としては従五位下に相当。

栄華は六条院に極まれり

六条院は春夏秋冬を配した四つの町からなり、四季折々の催しが営まれた。その雅な世界は光源氏の莫大な財力と権力があってこそのものといえる。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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