夫のこづかい3万円が老後資金を食いつぶす…定年後に減額する方法

こづかいを円満に削減する方法は(写真:PIXTA)

夫が現役だったときは、「足りなくなった」と言われれば渡していたこづかい。だが、定年後、年金頼みの生活になるのなら夫のこづかいが大きな負担になるという。

定年退職した夫のこづかいの平均月額は3万円前後(’21年・マイナビニュースの調査より)というデータもある。

「3万円は高いですが、減らそうとすると夫からの抵抗にあうかもしれません。しかし、老後の生活費が足りなくなっては一大事」

こう話すのは、実体験に基づくアドバイスに定評のあるファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんだ。畠中さんが示す、年金月額20万円程度の家庭の支出内訳は次のとおり。内訳を見るとこづかいはかなりのウエイトを占めている。

【年金月20万円生活の支出】

食費:4万2000円
住居関連費:1万円
日用品費:8000円
電気・ガス・水道代:2万5000円
通信費:1万5000円
教養娯楽費:1万円
レジャー費:1万円
被服費:5000円
医療費:1万5000円
こづかい:3万5000円
交際費:1万円
生命保険料・損害保険料:1万円
雑費:5000円

〈合計〉20万円

「生活費は年金の範囲内でやりくりしなければ晩年が悲惨なことになります。蓄えがあったとしても、それは、冠婚葬祭や固定資産税、孫のお祝いなどの特別支出のための予算とし、手をつけないほうがいいでしょう。生活スタイルにもよりますが、平均すると、老後30年間で老後資金は1500万~2000万円必要です。老後資金を食いつぶさないためにも、工夫や交渉をして、おこづかいは減らしていきましょう」(畠中さん・以下同)

今回は畠中さんとともに、夫のこづかいを減額する交渉術を考えていこう。夫婦が険悪ムードにならないためにはコツがあるという。

「大事なことは『仲よし夫婦』と、『不仲夫婦』ではアプローチは変わってくるということです。仲よし夫婦の場合は夫婦ペアで行動し、懐ろ事情を買い物などの実体験で知ってもらう。一方、不仲夫婦なら『逆ギレ』されぬよう明確な数字を示し、具体的な助言をして納得してもらいましょう」

■仲よし夫婦は共に行動を

8つのノウハウを畠中さんは伝授してくれた。まず、夫婦仲がいい人へおすすめの策を紹介しよう。

【1】夫をスーパーに連れていく

「仲よし夫婦であれば、夫と一緒に行きつけのスーパーへ赴き、買い物をさせてみて、かかる費用を教えましょう。たとえば刺身は柵よりぶつ切り、牛肉ならブロックより細切れが断然おトク、というように物価を肌で実感してもらってみては」

やりくりの大変さを知ってもらえば、減額に納得してくれるはず。

【2】高齢者施設を夫婦で見学

「高齢者施設への入居一時金は数十万円から数千万円まで。持っているお金で、入れる施設のグレードは変わります。おこづかいを毎月1万円減額できれば、20年で240万円捻出でき、施設の入居一時金に充当できるケースもあるのです。グレードの異なる施設をいくつか夫婦で見学し、おこづかいの減額によるメリットを体感しましょう」

【3】水筒を2つプレゼント

「現役時代、いつも1杯500円のコーヒーを飲んでいたとしても、それはクセのようなもの。家で入れてあげたり、コンビニの100円コーヒーを小型の素敵な水筒に入れ替えて持ち歩けば一日中おいしくいただけます。外出時に冷たい飲み物、温かい飲み物の2種類を持たせてあげるのもおすすめです」

節約できるだけでなく、ほっこりした気持ちにもなりそう。

【4】バケットリストを作成

「バケットリスト(人生のやり残しリスト)を夫婦で作成。訪れてみたい旅先ややりたいことの期限と予算を記し、総額を出してみましょう」

がんばって減額した分だけ念願がかなうということ。

夫婦仲がいいのであれば、今後2人でやりたいことの計画を立てると節約のモチベーションになるはずだ。

■定年後に収入を得ることも大事

次に、あまり仲がよくない夫婦におすすめの方法だ。

【5】ライフプラン表を見せる

「老後30年間のライフプランを立てて夫と共有しましょう。まずは年金額から支出額合計を差し引いた赤字額の試算を。たとえば年間の支出が360万円で、年金額が250万円なら、110万円は赤字。その分を蓄えから補塡することになり、『80歳までに貯金は底をつくよ』と数字で示すとわかりやすいです。そうやって、不当におこづかいを減額しているのではないことを理詰めで理解してもらいましょう。表は手書きでOKです」

妻が手書きで一生懸命書いた表を破ったりはしないはず。

【6】余剰金を試算し、「一生分のボーナス」として渡す

「おこづかいを減額したうえで、【5】のライフプラン表で試算した結果、老後資金から100万円でも余剰金が出たなら、夫婦で2分の1ずつ受け取るとお互いの自由度がアップして気分も上向きに。まとまったお金を渡せば、おこづかいをさらに月額1万円減額してもらいたいときも、交渉がスムーズに進むでしょう」

運用するも、虎の子としてキープするのもそれぞれの裁量だ。

【7】稼ぎの半分以上は還元

「収入を得ることも大事です。定年後にシルバー人材センターに登録するもよし。稼ぎの半分以上は夫のおこづかいにしてあげると、仕事のやる気が上がります」

仲がよくないのなら、夫が出かけてくれると妻も助かる。

【8】限られたこづかいをスらないようアドバイスを

「おこづかいの範囲でいかにやりくりさせるか。節約慣れしていない夫に、近所のおトクな喫茶店や飲み屋など、使える情報を教えてあげましょう」

落ちぶれたのではなく、生活が変わっただけだと理解させること、と畠中さんは強調する。

手渡しているこづかいで赤字にならないよう、見守ってあげることも大事だ。

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