【特集ザ・作州人】有限会社「テイクツー」・竹位隼之さん ジブリグッズなど取り扱う 「もがきながら楽しんで」

今回の「ザ・作州人」は有限会社「テイクツー」の竹位隼之さん(64)にご登場願った。現在は神戸ハーバーランドでスタジオジブリのキャラクターグッズなどを取り扱う「どんぐり共和国」を手掛け、さらにキッチンカー事業にも乗り出している。元は住友銀行(現三井住友銀行)に13年勤務。やがて何かに導かれたように独立の道へ進んだ。その背景にあったものとは。

みなと神戸の「どんぐり共和国」を訪ねると竹位さんが穏やかな表情で迎えてくれた。オシャレでどこか自由な雰囲気。だから「元銀行マン」と聞いて驚いた。しかも大手の住友銀行と言うから二度ビックリだ。

「当時は三和も大和も野球に力を入れてましてね。いや〜僕も野球で入ったようなものですよ」

岡山県津山市の津山商業高校時代は硬式野球部。最後の夏は「3番・遊撃」として、センバツ4強帰りの岡山南をあと一歩まで追い詰めたが、そのときに左太ももを負傷してしまった。

「下がぬかるんでいて、プチッと音がしました。その後は治まってはいたんですが…」

入行後に古傷が再発し、結局1年で退部せざるを得なかった。その後は本業に専念。バブルの光と影を経験する一方で東京勤務時代に人生の良き伴侶を得た。

しかし、人生は分からない。それとほぼ並行するかのように竹位さんは31歳で先輩が立ち上げたコンサルタント会社に転職し、その後に起業。その間に2男、1女を育て上げるわけだが、いまに至るまでにはさまざまな出会いや心の揺れがあったのは言うまでもない。

「銀行員としての恩恵も受けましたが、転職したのは自分の力で挑戦したいと思ったから。自分がやった分だけ返ってくることにやりがいを感じました。学歴のこともあったかもしれない」

今回、訪れた「どんぐり共和国」は「となりのトトロ」「魔女の宅急便」などのジブリ商品を専門に扱うベネリック株式会社のFC店で全国に40店舗ほどある。竹位さんが手掛けている神戸モザイク店は2005年7月に開店。その後移転拡張し、品ぞろえが豊富なことから人気店のひとつとなっている。

人生の一大転機になったのは38歳のとき。ダイワインターナショナル株式会社の業務委託を受け、責任者として、キャラクター事業に足を踏み入れたことだった。「手伝いに行ってこい」と営業部長として送り出された業界は、まだ手つかずの状態。「もののけ姫」のピンバッチを販売したところ、飛ぶように売れたという。

これが縁で2001年に「どんぐり共和国天保山店」立ち上げの際に直営オーナーに立候補。やがてジブリ美術館や長谷川町子美術館などのグッズを受託製造するまでになった。

有限会社「テイクツー」を設立したのも神戸店開店と同じ2005年。その後は、関西空港店や北神戸店などの出店(のち閉店)に関わる一方で飲食業も展開した。ここ数年はコロナ禍で大変な時期もあったが、最近になって六甲アイランドに夫婦でキッチンカー「ポパイ」を出店。ハンバーガーを販売するなど、いまも精力的に活動している。

好きな言葉は「天上天下唯我独尊」「人間バカになれ」だという。これまでの半生を振り返り「リスクはつきものだし、失敗を怖がらないこと。僕は干支が亥なんで走り出したら止まらない。やりたいことをやって来ました」と言ってニッコリ笑い、こう続けた。

「僕は決して成功者ではなく、むしろコロナに負けた敗者かもしれない。でも、自分のやってきたことに関しては悔いはないですし、いまも四苦八苦もがきながら楽しんでます。家族には大変な負担を掛けてしまっていると思いますが…」

みなと神戸の海と風が似合う竹位さん。何とも言えない、いい横顔をしていた。漂えど沈まず。これからもきっと大海原を進む船のようにゆったりと、ゆっくりと進んで行くのだろう。(山本智行)

◇竹位隼之(たけい・たかゆき)1959年5月1日生まれの64歳。作東中から津山商へ。卒業後に住友銀行入行。90年ファイナンスコンサルタント会社設立に関わり、営業担当。97年キャラクター事業に従事し、2001年「どんぐり共和国・天保山店」オーナー。ジブリ美術館などのOEMも手掛ける。兵庫県三田市在住。

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