女子日本代表が決戦の地へ、林咲希「新しいバスケをやりつつ、日本らしいスキルを出していく」

大会6連覇に向けてオーストラリアへ出発

6月22日、女子日本代表AKATSUKI JAPAN(FIBAランク9位)、「FIBA女子アジアカップ2023」に向けてオーストラリアに出発。出発前に取材に応じ、恩塚亨ヘッドコーチは「ここまで今までできる準備をやってきた手応えと共にチャレンジしたいと思います」と語ると、キャプテンの林咲希は「新しいバスケをやりつつ、日本らしいスキルを出していく。今やっているバスケを出していい流れでやれればと思っています」と、髙田真希は「優勝することが目標なので、そこに向けて全力を出すだけです」と語った。

今年最大の目標は「FIBA女子アジアカップ2023」(6月26日〜7月2日、オーストラリア・キーセンター)でベスト4に与えられるオリンピック世界最終予選出場権(2024年2月)を獲得すること、そして大会6連覇。

2021年に開催された東京2020オリンピックで銀メダルを獲得後、アシスタントコーチだった恩塚氏がヘッドコーチに昇格する形で始動。昨年は、オーストラリア・シドニーで開催されたワールドカップへの出場したものの、グループステージで1勝4敗となって決勝トーナメントには進出できず。9位に終わり、オリンピックに続いてのメダル獲得は叶わなかった。その結果を受けて、今年恩塚HCが語ったのが「40分間 世界一のアジリティを発揮し抜くこと」を目標にすることだった。さらに課題の克服、日本の強みをさらに強化するために、「ポジショニング力:体格差の克服」、「日本の強み封じへの対応:3つの強化システム」(ペイントアタックの質を改善システム、3Pシュート・チャンスを生み出すシステム、プレーを壊しにくるディフェンスを超えるシステム)、「カオスを制する戦い」と3つのポイントを掲げている。

合宿の中で新たなバスケットを構築し、カナダ遠征でも力試しした日本は、「三井不動産カップ2023 (高崎大会)」ではデンマーク代表(同52位)に3連勝。ディフェンスではバックコートからプレッシャーをかけ続けて時間を削り、選択肢を消してターンオーバーを引き出し、リバウンド争いでも優勢に。オフェンスでは、ボール、人が絶えず動いてオープンの選手がシュートを打って得点。またドライブ、ペネトレイトに合わせて選手が同時に動いてオープンの状態を作るといった停滞しないバスケットが見せた。

それは選手たちも手応えを感じており、髙田は「オフェンスのシステムとして、人とボールが常に動くシステムになっているので、相手にディフェンスされても次の選択肢が出せる状況にあるので、スムーズにオフェンスが行えるかなという印象です」とチームの強みについて語っている。

デンマーク戦後は、「ディフェンスのローテーションの部分ですね。デンマークはインサイドで強引にやってこなかったので、高さ対策ができているのかはすごく気になった部分がありました。そこのローテーションの練習もこの3日間でやりました」と、課題についての確認も行ったと林は語った。

女子アジアカップ2023のグループラウンドでは6月26日にチャイニーズ・タイペイ(同33位)と、翌27日にフィリピン(同42位)と、そして28日に開催国のオーストラリア(同3位)と対戦。グループ3位以上となれば、6月30日から行われる決勝トーナメントに進むことになる(グループ1位は準決勝からとなる)。

恩塚HCは「できることは一戦必勝であり、1プレー1プレーにこだわり、戦い抜くということです。1プレー1プレー勝ちに行く、そういうことの積み重ねだと思います」と語る一方、「1戦必勝で行くことは変わりないのですが、ランキングから見てもオーストラリアが一番タフなゲームになると思います」とオーストラリア戦が重要な一戦になると語っている。

果たして女子日本代表が再びトロフィーを掲げることができるか。オーストラリアでの快進撃に期待したい。

(次ページから林咲希キャプテン、髙田真希、恩塚亨HC一問一答に続く)


FIBA女子アジアカップ2023

開催期間:2023年6月26日(月)~7月2日(日)

開催地:オーストラリア(シドニー)

大会公式サイト:https://www.fiba.basketball/womensasiacup/2023

組み合わせ(FIBAランク):

[グループA]中国(2位)、韓国(12位)、ニュージーランド(29位)、レバノン(44位)

[グループB] オーストラリア(3位)、日本(9位)、チャイニーズ・タイペイ(33位)、フィリピン(42位)

グループB日本戦予定:

現地6月26日(月)17時(日本時間同日16時)/vs.チャイニーズ・タイペイ

現地6月27日(火)13時半(日本時間同日12時半)/vs.フィリピン

現地6月28日(水)19時半(日本時間同日18時半)/vs.オーストラリア

現地6月30日以降決勝トーナメント

林咲希「臨機応変にできるかというのが大事なところ」

――今の状態、個人とチームとどうと耐えていますか?

「チームとしてはデンマーク戦が終わってから、自分たちが思っていたことを選手で話して、それを元に練習をしてきたので、それが本番でしっかり出していきながら、その本番の中でも修正していきながら、いい結果を起こせるようにやっていきたいなと思っています。自分的には本当にデンマーク戦で感じたように、走るバスケットをやらなければいけないので、先頭を走ることだったり、ルーズボール、リバウンド、その姿勢をしっかり出していきながら、チームを引っ張っていけたらなと思います」

――6連覇、パリ五輪予選に入るためのベスト4が必要という女子アジアカップ2023ですが、ご自身が一番フォーカスしているのはどこですか?

「結果を残さないといけないと思っているので、そこは本当に強い気持ちは正直あります。そこで結果を残せれば、自分たちのバスケができているということだと思うので、チーム一丸となって戦わないと、日本を分析しているチームも多いので、新しいバスケをやりつつ、日本らしいスキルを出していく。今やっているバスケを出していい流れでやれればと思っています」

――デンマーク戦で不安はありましたか?

「ディフェンスのローテーションの部分ですね。デンマークはインサイドで強引にやってこなかったので、高さ対策ができているのかはすごく気になった部分がありました。そこのローテーションの練習もこの3日間でやりましたね」

――キャプテンとして、自分の中で変化などありましたか?

「前回は若いチムで女子アジアカップ2023に行ったので、みんな勢いで頑張ろうというのがありました。今回はバスケットの動き、理屈のあるバスケをしたほうが絶対にうまくいくとやっています。それをまとめるのがすごく自分的に苦手だったから、不安もあったんですけど、リツ(髙田)さんだったり、ナコ(本橋菜子)さんもいるので、力を借りながら、自分は雰囲気作りをしていこうと考えていて、それをやっているおかげで自分もちゃんとやれるという気持ちをまず持ってやれているのが一番いいかなと思います。今まで下の年代だったので、付いていこうというだけだったんですけど、引っ張る意識は増えてきましたし、しっかりやらなければいけないという根底がまずあったので、そこのレベルは自分的には上がったかなと思います」

――緊張とワクワクどちらですか?

「今はまだ不安はあります(笑) けど、これがずっとワクワクじゃないことがいいことかなと思っていて、この不安感があるからこそ、もっともっと伸びる部分があるんじゃないかなと捉えているので、もっといろいろな人の力を借りつつ、いいチーム作りをしていけたらなと思っているので、いろいろな人とコミュニケーションを取りながらやっていけたらなと思います」

――コミュニケーションで不安を共有するという話がありましたが、以前からあったことですか? チームが成長したからでしょうか?

「練習をやっていくうえで、今のバスケットは一人一人が話をして、考えを知って、ここはこうしたほうがいいよねということで、ラフな会話を上も下も関係なくできていたほうがいいですし、いろいろな人と出るのでそういう会話は必要だとチームのみんなも思っているので、それはできていると思います。みんなが発言するようになっていますし、恩塚さんもそういう風にやってほしいと言ってくれているので、まだまだ足りないかなと思っています。そこも発信していきたいと思います」

――デンマーク戦を踏まえて、大会の目標達成に向けてカギになる戦術、プレーはどこになりますか?

「戦術ではセットプレーがほぼないので、ずっと言っているコミュニケーション、一人の選手がこう動いたらこう動くとか、こうしたほうがいいよね、というきついときでも頭はすっきりしながら戦えるかが本当に大事です。それこそエネルギーをめちゃくちゃ使うので、出ている時間、しっかりやらないといけないから、一人ひとり役割が、やるべきことをしっかりやれるような雰囲気作りをやっていますし、やらないといけないよねと。勝つためにはそれが絶対必要なので、疲れたとかは絶対に言えないですし、もちろんどの選手もそうだと思うので、きついときこそ自分たちのバスケがどうできるかが大事だと思います。デンマークの時は足を止めずにやれたんですけど、そこはあまりフィジカルでぶつかってこなかったというのがあったので、女子アジアカップ2023でぶつかられても足を止めずにできるかは大事なところだと思います」

――逆境に立たされる経験がどこかであるかもしれません。チームとして立ち返るベースがあるのか、その時にみんなで話し合うのか、どちらになりますか?

「その時の状況ですね。流れからいうとやっぱり、ディフェンスはやらないといけないですし、プレッシャーをかけなければいけない。あと走ること。そういう細かなところは絶対にやり続けないとできないので、それをやったうえで、相手がこうしてきたからこう守ろう、オフェンスしようというのを臨機応変にできるかというのが自分たちが大事なところなので、まず走る。リバウンドを取る。戦うというそこの根底は絶対にないと行けないものだと思っています。そこができていない選手がいたら指摘しますし、日本はそれをやらないと勝てないと思っているので、全員でやり通したいと思っています」

――キャプテンとして一番しつこくやるところですね。

「そうですね。自分が一番の姿で見せて、発言できるようにするという風には思っています」

髙田真希「目標は優勝、予選3試合全部勝つことがすごく重要」

――ご自信のコンディションはいかがですか?

「自分としても万全ですし、チームとしても上がっていると思います」

――チームの強みはどこだと思っていますか?

「オフェンスのシステムとして、人とボールが常に動くシステムになっているので、相手にディフェンスされても次の選択肢が出せる状況にあるので、スムーズにオフェンスが行えるかなという印象です」

――ツーガードの形が多くなりますか?

「ツーガードもあるし、他の選手も連動して動くので、システム上ですね」

――恩塚HCがオフェンスは軽やかにしつこく、ディフェンスはうるさくしつこくとおっしゃっていました。これは、当初から言われていることですか?

「そうですね。しつこくディフェンスする。24秒ぎりぎりまで攻め続けるということは、日本らしいあきらめないバスケ。日本が忘れてはいけないところだと思うので試合でもしっかり発揮していきたいと思います」

――デンマーク戦を受けて短期間で顧みたことは?

「2戦目のように、自分たちがスムーズにいかなかったり、うまくいかないときにどうやって攻めたらいいかとか、おろそかしてはいけないディフェンスの部分とか。どちらにせよ、タフに戦わなければいけないところなので、そういった部分を短い期間で、自分もしっかりやりましたし、チームとして共有していたので、調整しながらうまくできていると思います」

――すでにモチベーションは高まっていますか?

「勝つために行きますし、モチベーションも上げていくだけだと思うので、コンディションもそうですけど、しっかり、現地に着いて2日間時間があるのでモチベーションを上げていくのとやるべきことができるように声をかけていきたいと思います」

――選手だけでミーティングをしたのですか?

「選手だけではないですね。ただ3試合した内容と、振り返りだとかはチームとしてやりました」

――シドニーは昨年、悔しい思いをした因縁の地。今回はどういった形で戦いを見せていきたいですか?

「目標は優勝なので、しっかり優勝を目指して、なおかつ予選3試合全部勝つことがまずすごく重要になってくるので、初戦も大事ですけど、予選ではオーストラリアが山場だと思っています。その試合にいい状態で臨めるように、1、2戦目も全力で戦ってチームとしてやるべきことを試合の中で徹底していく大切さだとかを、上げていくゲームをしていきたいなと思います」

――当時のオーストラリアとはメンバーも違うと思いますが、こういう戦いができそうだとか手応えはありますか?

「(昨年は)フィジカルの部分で負けてリバウンドを取られてしまったので、インサイドを攻められてしまったので、まずそこを負けないということが大事。体をぶつけあうこと。中に押し込まれないようにということは練習の中でも徹底してやってきているので、そういったところを、この2日間でも意識してやっていきたいなと思います」

――昨年のチームと比較しての成熟度は?

「そうですね。積み上げてきたものがあると思っているので、その辺の成熟度は高まってきていると思います」

――チャンピオンとして迎えるけど、気持ちとしてはチャレンジャー?

「そうですね。自分としてはチャレンジャーですし、チャンピオンという意識はみんなものないと思います。そこまで身構えたものはないですけど、ただ優勝することが目標なので、そこに向けて全力を出すだけですね」

――勝ち上がりの中で成長する必要もありますか?

「成長していけるのもそうですし、準備をしてきたので、試合の中ですべて出せるということが大事だなと思います。最初の質問もありましたけど、40分間最後まで自分たちのやるべきことを貫くことが大事で、そういった意味でもしつこさというのが大事だなと思います」

恩塚亨HC「1プレー1プレーにこだわり、戦い抜く」

――まもなく出国、今の気持ちをお願いします。

「胸が高まりますね。ここまで今までできる準備をやってきた手応えと共に女子アジアカップ2023にチャレンジしたいと思います」

――女子アジアカップ2023への意気込みを改めて教えてください。

「できることは一戦必勝であり、1プレー1プレーにこだわり、戦い抜くということです。1プレー1プレー勝ちに行く、そういうことの積み重ねだと思います」

――大会のテーマはありますか?

「オフェンスは軽やかにしつこく、ディフェンスはうるさくしつこくです。両方ともしつこくいくんですが、オフェンスは停滞しないように軽やかに。ディフェンスは、相手のリズムを崩せるようにうるさくしつこくいこうと言っています」

――大会6連覇を成し遂げるために大事なことはなんでしょうか?

「自信を持つことだと思います。やってきたことを信じること。自信を胸にして、一つ一つの勝負をこだわること。こだわりのプレーを一つ一つ発揮したときは、カナダ戦、デンマーク戦でもいい形ができていたと思っています」

――デンマークとの3連戦後はどんなことをしましたか?

「特にディフェンスの細かなところで、スクリーン・ディフェンスの対応やポストへの対応のところです。相手にスペースを与えないためにどういう努力をするべきか、ローテーションをどういう風に考えてやるべきかということを考えてやってきました。選手たちは、ものすごくエネルギーが高くて質の高い練習ができたんじゃないかなと思います」

――女子アジアカップ2023、大事な初戦はチャイニーズ・タイペイとなります。

「個人の1対1の攻防を重視しているので、そこの先手を取ること。チームとして1対1の相手の攻撃を封じていくこと。その積み重ねで、主導権を握りたいですね。出だしが勝負だと思っているので、1Qの開始から高いエネルギーで戦うことを目指していきたいです」

――大会の中でピークとなるのはオーストラリア戦でしょうか?

「1戦必勝で行くことは変わりないのですが、ランキングから見てもオーストラリアが一番タフなゲームになると思います」

――デンマーク戦後、選手のコンディションは大丈夫でしょうか?

「大丈夫です。みんないいエネルギーではつらつとしています。今朝もいい練習をしていました」

――自信を取り戻す大会になります。

「世界で勝つために色々なチャレンジがあると思いますが、チャレンジに対して自分たちができることはたくさんあると、手応えをトレーニングの中で持つことができているんじゃないかなと思います。あとは課題を克服、クリアしていくために、心も体も一番いい状態になるべきだと思うので、そのままやっていってほしいなと思います。自信は自分がやってきたことを信じることだと思うので、そこをやってきたことを大事にして、やっていきたいと思います」

――大会に向けて選手たちに期待することはなんでしょうか?

「一番思うのは、自分の持っているもの、今の自分にできることをオーストラリアで出し切ってほしいなということ。悔いのない戦いをしたいなというのは、私が一番思っていることです」

――ベスト4以上というプレッシャーはありますか?

「プレッシャーはどんな試合でもあるので、それを考えるよりも目の前の相手をやっつけることだったり、1プレー1プレーに対して勝負にこだわっていくことだったり、チーム一丸となって戦い抜くということに対してフォーカス、大事にしていきたいなと思います」

――林キャプテンに期待すること。

「2つあって、背中で戦う姿を見せてほしいというところと、あとはコミュニケーション。一人一人と熱き思いを、一丸となって戦おうとまとめてほしい。実際今やってくれているので、そういう林選手をサポートしながら一緒に戦っていきたいと思います」

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