もっちぃ「みんなのため生きた」 みとった宮内駅員・宍戸さん、駅には献花・記帳台

献花・記帳台が設けられ、もっちぃの遺影を前に多くの人が手を合わせるなどし、冥福を祈った=南陽市・フラワー長井線宮内駅

 13歳で息を引き取った南陽市のフラワー長井線宮内駅のうさぎ駅長「もっちぃ」の晩年を共に過ごした、同駅員宍戸優花里さん(28)=米沢市=が22日、山形新聞の取材に応じ、もっちぃをみとった際の様子を語った。人間にすると90歳を超えていたとされ、大往生だった。同駅には同日、うさぎ駅長をしのぶ献花台と記帳台が設置され、多くの人が花を手向けて、遺影に手を合わせ、冥福を祈った。

 宍戸さんは入社以来6年間、うさぎ駅長と暮らした。勤務日と月・水曜の休日も一緒で、もっちぃは勤務日、夜も帰らず、駅長として駅での“勤務”を続けた。休日は同市内の宍戸さんの自宅で過ごした。2021年12月からは足腰が弱り、うさぎ駅長の業務は休み、宍戸さんの家で過ごす時間が長くなった。週に1度ほどは、市内の動物病院で診察を受ける日々が続いた。栄養剤の投与が必要な時もあった。

 旅立った日の夜、もっちぃは弱りながらも餌を口に運んでいた。「みんなのために、懸命に生きようとしていた」と宍戸さん。普段は鼻で呼吸をしていたが、口で呼吸をし出し、体をさすり声を掛け続けた。ただ、再び愛らしい顔で宍戸さんの顔を見ることはなかった。動かなくなってからも体をさすり続けた。その夜は、ほとんど眠ることはできなかった。

 22日午前、もっちぃは長井市内で火葬された。駅の利用者との触れ合い、多くの人たちにかわいがられた様子を思い出す。「長井線がずっと地域に愛されるように見守ってほしい。天国で兄弟たちと元気に走り回っているかな」と宍戸さん。頬を涙が伝った。

 同線を運営する山形鉄道は、同駅の駅長室と待合室に献花・記帳台を設けた。新潟市から駆け付けた会社員酒井毅さん(58)=同市西区大野町=は「元気になる日を待ちわびていた。一度会いたかった」と遺影を前に静かに手を合わせた。同社はお別れの会を7月下旬に計画している。

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