CF争いは古橋亨梧が半歩リードか?/六川亨の日本サッカー見聞録

[写真:Getty Images]

日本が4-1と快勝したキリンチャレンジカップ2023のペルー戦。左SB伊藤洋輝の代表初ゴールに始まり、三笘薫が1ゴール1アシストの活躍を見せるなど、エルサルバドル戦に続いて攻撃陣が爆発した。この試合の詳細や、伊東純也や前田大然ら活躍した選手についてはすでに多くのメディアで取り上げられているので、ここではそれ以外の選手についてレポートしたい。

まずはスタメンで1トップを任された古橋亨梧である。前半13分に伊東純也からのクロスに惜しいヘディングシュートを放ったり、20分過ぎからは立て続けにチャンスシーンを迎えたりしたものの、この日はノーゴールに終わった。2試合連続してゴールという結果を一番残したかったのは古橋自身だっただろう。しかし、日本代表の1トップとして最低限のアピールはできたのではないだろうか。

前回招集された22年9月のエクアドル戦(0-0で途中交代)や6月のチュニジア戦(0-3で途中出場)では、アピールらしいアピールをほとんどできなかった。出場時間が短かったせいもあるが、古橋自身が何をしたらいいか表現できず、周りの選手とも意思の疎通を欠いた印象が強い。

それがペルー戦では、伊東が何度も右サイドから速くて強いアーリークロスを入れて、古橋にシュートチャンスを提供していた。古橋は“自身が得意とする形”からゴールを量産して、セルティックで得点王という結果を残した。そのことを伊東らチームメイトも理解したからこそ、「速くて強いアーリークロス」で古橋のストロングポイントを生かそうとした。1年前との大きな違いである。だからこそ古橋は、“得意な形” からのゴールでチームメイトのアシストに応えたかったに違いない。

エルサルバドル戦で代表初ゴールを決めた上田綺世はケガでチームからの離脱を余儀なくされたが、1トップ争いでは「得意とするプレー」のわかりやすい古橋が半歩リードしたのではないだろうか。上田は古橋と違い、さまざまな得点パターンを持っている“万能型”のストライカーである。しかしオールラウンダーであるが故に、「これだ」という“決定的な形”がわかりにくい。このため周囲の選手と連係を深めるには時間を要する。ここらあたりがクラブチームで結果を残していても、代表ではなかなかゴールを奪えない遠因にもなっているのだろう。

古橋に続いて取り上げたいのが右SBの菅原由勢だ。ペルー戦では対峙したMFクリスティアン・クエバをケアしつつ、守勢に回らずチャンスと見るや素早い攻め上がりで右サイドの攻撃を活性化した。とりわけ前半37分の2点目、三笘のゴールにつながったドリブルでの攻め上がり(伊東とのワンツーを含め)は圧巻だった。

無尽蔵のスタミナを生かした上下動に加え、6月の2試合では攻撃のセンスを遺憾なく発揮。橋岡大樹とのポジション争いでも頭一つ抜け出したと言っていいだろう。

彼ら2人に比べて評価が難しいのがCBの谷口彰悟と板倉滉である。ペルー戦ではしっかりとカウンターに対処していたものの、開始直後の5分間以外は押し込まれる時間帯が少なかったため、相手の圧力に耐える力、空中戦で跳ね返す力を判断することはできなかった。

ビルドアップに関しては、谷口の落ち着き、安定感とフィードの正確性は現在のメンバーでNO1と言って差し支えない。この2人のセットは9月以降も継続して起用することで、コンビネーションを高めて来たるべきアジアカップに備えて欲しい。彼らのバックアッパーとしては、伊藤洋輝や瀬古歩夢ということになるのだろう。あとは冨安健洋の回復具合といったところか。

ようやく世代交代の歯車が動き出した森保ジャパンのDF陣。真価が問われるのは9月のドイツ戦であることは言うまでもない。


【文・六川亨】

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