【部活どうなる(3)ダンス部】生徒好きなダンス部、顧問おらず断念…しかし地域移行で新設叶う どう実現

合同部活動という形で新設されたダンス部に参加する遠藤彩須美さん(右)と生徒たち

 埼玉県白岡市は部活動の地域移行2年目の昨年、市内4中学校の生徒が誰でも参加できるダンス部を新設した。生徒の要望は高いものの、指導できる教員が少ないダンス部。地域移行で多様な部活動ができるモデルケースとなっている。

 新設の前年、ある中学校で生徒有志がダンス部の創設を学校に求めた。しかし、「顧問の人数が足りない、教えられる先生がいない」と断られ、失望が広がった。

 市のアンケートで、生徒たちが最もやってみたい部活動がダンス。市教委はモデル事業の目玉にダンス部創設を据えた。「生徒の願いに応えたかった。複数校の生徒が集まり、外部に指導をお願いできる。地域移行に適している」と市教委は意図を説明する。

 指導するのは、遠藤彩須美さん。ダンスの経験を生かし、これまで子どもたちに指導してきた実績がある。市が委託したスポーツデータバンク社に指導員として登録し、中学生にダンスを教える。

 スマートフォンと小型スピーカーを慣れた手つきで操る。「キック、後ろ、キック、後ろ。頭を合わせます。音楽入れます」。生徒の前に立ち、リズミカルな動きで手本を示し、振り付けを教える。

 生徒は休憩時間も大きな鏡の前で自主練習に取り組む。遠藤さんは「みんな前向きで集中力が高い。真面目に取り組んでくれる。人の前で表現する楽しさをぜひ伝えたい」と熱を込めた。

 練習後は保護者や生徒が、遠藤さんやスポーツデータバンク社のスタッフ、市教委の職員と相談する姿も。平日と週末の兼ね合い、生徒の希望や学校との調整、送迎の仕方など、細部の詰めが求められる。

 平日は学校の卓球部に所属し週末はダンス部に、あるいは平日は別のダンス教室に通い週末はダンス部に、といった組み合わせができる。ダンスに汗を流す姿を見守る保護者からは「学校でダンス部をつくるのは難しい。でも子どもがやりたいと思っていることをやらせることが大切では」との声が聞こえた。

 以前、学校の答えに落胆した生徒は、地域にできたダンス部に参加し誰よりも喜んでいる。「とてもうれしい、何より楽しい」と満面の笑みを見せた。

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