片町の名物マスターが教える美味しいハイボールの作り方&おすすめウイスキー5選

晩酌といえば断然ビール派だった筆者ですが、最近は専らハイボール。すっきりした飲み口と爽やかな喉ごしでどんな料理とも合うだけでなく、低糖質で罪悪感なく晩酌を楽しめるのも◎。あの炭酸で弾けたウイスキーの芳香が恋しくて、今宵も独りグラスを手にするのです。

そんな最強の晩酌「ハイボール」を極めるため、今回は金沢の人気バーを直撃。ウイスキーの選び方から炭酸水の注ぎ方まで、名物マスターが美味しいハイボールの作り方を伝授します。

アイデア満載のハイボールが飲める店

やってきたのは金沢市・柿木畠にある「広坂ハイボール」。店名からもお分かりの通り、ハイボールをメインに30年以上にわたって営業を続ける老舗のバーです。

ウイスキーはシングルモルトを中心に吟味された品揃え。オリジナリティあふれるハイボールの数々は1,000円前後で飲むことができます。

マスターの宮川元氣さんは片町の老舗オーセンティックバー「倫敦屋酒場」の出身。もともとは俳優志望で、東京で長らく演劇に携わっていた経歴を持ちます。

筆者のようなウイスキー初級者から上級者まで、お客さんの経験値によって会話を合わせてくれるので、すごく親しみやすいんですよね。

開業してから35年、紆余曲折ありながら「仕事が楽しいことに変わりはない」と宮川さん。取材中も常に笑顔でウィットに富んだジョークを飛ばしながら我々を楽しませてくれた。

それではさっそく「美味しいハイボールの作り方」を教えてもらいましょう!

プロ直伝!美味しいハイボールの作り方

① ウイスキー選び

ウイスキーの香りが炭酸とともにグラスから立ち上り、奥深い風味を堪能できるのがハイボールの魅力。原材料や製造方法によって特徴はそれぞれですが、大半のウイスキーはハイボールに合うと考えて良いそうです。

宮川さん:ハイボールにすると良くも悪くもウイスキーが本来持っている香りや風味がより強く出ます。たとえばマッカランのようなシェリー樽で寝かせたウイスキーは、甘味が強調されるのでハイボールには向いていない傾向がありますが、それでも好んで飲まれる方はいます。味の好みは十人十色。結局は自分が美味しいと感じるウイスキーを使うのが一番なんです。

香り豊かなハイボールを楽しむならモルトウイスキー、クセのないハイボールを楽しむならブレンデッドウイスキーといった感じで、自分に合ったウイスキー選びから始めるのが良さそうですね。

② 準備

ウイスキーと炭酸水、氷があれば作れてしまうシンプルさもハイボールの魅力。だからこそ美味しく作るためのコツが隠されている気がします。

宮川さん:ご自宅で楽しむ場合はウイスキー、炭酸水、グラスをしっかり冷やすのがポイント。ウイスキーは冷凍庫、それ以外は冷蔵庫に入れておきましょう。そうするだけでウイスキーの質に左右されない、ツルツルと喉を流れていく非常に飲みやすいハイボールを作ることができますよ。

なお、宮川さん自身は「ウイスキー本来の味が分からなくなる」との理由で、炭酸水以外は冷やさずに使用。良いウイスキーの場合は冷やさず、炭酸によって香りを立たせるのが基本となります。あくまで自宅レベルで美味しくするためのコツとして捉えておきましょう。

③ 作り方

まずはウイスキー、それから炭酸水を注ぎ、最後に氷を入れて、マドラーでくるっと一回転させるのが宮川流。果たしてその秘密とは?

宮川さん:私が考えるウイスキーと炭酸水の黄金比は1:3。お店ではウイスキー30cc、炭酸水90ccで提供しています。大事なのは混ぜすぎないこと。ウイスキーと炭酸水の比重の差によって自然と混ざるので、ワンステアするだけで十分なんです。

最後に氷を入れるのは、暑い日の一杯目は炭酸多めのキリッとしたハイボールを、酒席の終盤はガスの量を抜いて落ち着いた一杯に、といった具合にお客さんの状況に合わせて炭酸ガスの量を調節するためで、実際に自宅で作るときは最初に氷を入れても問題ないそうです。

④ 氷について

冷蔵庫の製氷器で作られた氷でハイボールを作っている人も多いかと思いますが、ワンランク上のハイボールを作るなら氷にもこだわってみてはいかがでしょうか。

宮川さん:コンビニでも良いので、できれば市販のものを使うといいですね。広坂ハイボールでは2〜3日かけてゆっくり作られた氷屋さんの氷を使用していますが、そうした氷は溶けにくいのでハイボールが薄まることなく最後まで同じ味わいが楽しめるんです。

ちなみに自宅の冷蔵庫で溶けにくい氷を作りたい場合は、一度沸騰させたお湯やミネラルウォーターを製氷器に注いで、タオルでくるんだ状態で冷凍してみてください。お店で見るような透明な氷ができますよ!

つづいては『広坂ハイボール』でも提供されているおすすめのハイボールについて聞いてみました。

宮川さんのおすすめハイボール5選

① デュワーズ ホワイトラベル

宮川さん:デュワーズは世界的に知られるブレンデットスコッチウイスキー。これがまた面白いお酒で、熟成期間の短さからロックやストレートだと物足りなく感じるけど、ハイボールや水割りにした途端にものすごく美味しくなるんです。スムースな味わいと華やかな香りでハイボールを飲み始めるにはぴったりのウイスキー。リーズナブルなのも見逃せないですね。

② グレングラント×珠洲の塩

宮川さん:グレングラントはスコットランドのスペイサイド地方で造られているシングルモルトウイスキー。クセの少ない爽やかな香りが特徴で、非常に飲みやすい部類に入ります。私のお気に入りはグラスのふちに塩をまぶし付けたスノースタイル。天然塩の塩分とウイスキーの甘味の対比効果によって、より一層味わいが広がるんです。

③ タリスカー×黒胡椒

宮川さん:タリスカーはスコットランドのスカイ島で造られるウイスキー。アイラウイスキー(※)よりも落ち着いた香りで、そのハイボールに黒胡椒をまぶすのが通の飲み方として知られています。スパイシーな味わいが特徴のタリスカーと黒胡椒との相性は抜群。私どものお店ではより味わいを深めるために自家燻製した黒胡椒を使っています。

※スコットランドのアイラ島で造られるシングルモルトウイスキー。多量の苔が含まれたピートから生まれる独特の香り(正露丸や消毒液に例えられることが多い)には根強いファンが付いている。

④ カルヴァドス

宮川さん:カルヴァドスはフランスのノルマンディー地方で造られるリンゴを原料にしたブランデー。炭酸で割ることでリンゴの爽やかな香りが前面に押し出された、すっきりとした大人の甘さのハイボールが堪能できます。とくに女性の方におすすめしたいですね。

⑤ ジェイムソン×レモンピール

宮川さん:ジェイムソンは世界中で愛されているアイリッシュウイスキー。すっきりとしたフルーティーな味わいが特徴で、生ビールのようにグビグビ飲めるハイボールとしてお店でも人気があります。ポイントはレモンの皮をひとかけ忍ばせること。氷をクラッシュドアイスにするとグビグビ感がより一層と高まりますよ。

以上、宮川さんのハイボール講座でした。これからますますハイボールが美味しくなる季節。今宵の晩酌にぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?


広坂ハイボール

住所:石川県金沢市柿木畠4-9 [地図]

TEL:076-265-7474
営業時間:18:00〜24:00(日曜は15:00〜23:00)
定休日:月曜日

駐車場:近隣にコインパーキングあり
HP:https://www.h-highball.jp/

撮影:林 賢一郎

© ビッグカントリージャパン株式会社